介護の現場

月3~4回の夜勤手当を含め、給与は20万円強 辞めたいがほかに仕事がない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 関東圏の人口約10万人を抱える市内の「特別養護老人ホーム」に勤務して、ほぼ10年のキャリアを持つAさん(30代前半)。月額賃金は、手取りで約20万円強だ。

 基本給与に、数年前に取得した介護福祉士の職能給、それに月に3、4日の夜勤手当が加算されての金額。決して多いとはいえない。

 勤務先から車で20分という賃貸マンションには、妊娠3カ月を迎える共稼ぎの妻と、3歳になる長男の3人が住む。

「子どもの食事や風呂の世話など、本当は夜勤を避けたいのです。でも、少しでも多くの生活費を得るためにやむを得ません。それに、私が休むと、他の職員の仕事が2倍になってしまいます」

 介護職は「3K」といわれ、「汚い」「(給料が)安い」「気持ち悪い」というイメージがあり、人手不足も常態化している。

 老人ホームの中でも、入所費(月額平均、10万~15万円)が低価格という「特別養護老人ホーム」(全国で約8000カ所)は、入所待機人口が約40万人と推定されているが、Aさんによると、新たに入所するのは難しいという。

「表現は悪いですが、入居者が亡くならない限り、新しい入所者に機会はありません」

「老人ホーム」が抱える問題は、絶対的な施設不足と前述した介護スタッフの不足だ。

 介護スタッフの勤務体系はだいたい、「早番」(7~16時)、「日勤」(9~17時)、「遅番」(11~19時)、「夜勤」(17~翌9時)の交代制になっている。

 職員の主な職務は離床(就寝)介助、食事介助、排泄介助、入浴介助、医薬品服用・水分補給介助、レクリエーション介助等で、作業はハードだ。

 Aさんが勤務する約80人前後が入居している「老人ホーム」も、常に職員が不足している。

「スタッフ総数は50人ほどですが、あと4、5人は欲しいですね。ハローワークなどの紹介で面接に来ますが、職務内容の説明をしただけで、帰っていく人も多い。人を集めるのは大変です」

 面接で採用が決定した後、およそ3カ月間の研修期間を経て、正規の職員になる。ところが、研修期間中に「もう勤まらない」と辞めていく職員も少なくないという。

「介護は体力と我慢が必要です。ときどき訪問してくる家族から、『部屋が汚い、臭う』と苦情を言われます。また介助している相手から、『このバカ!』とか、『介助は女がいい!』とかの暴言を浴びせかけられることも少なくありません。痴呆症が進んでいる入所者からは食事が済み、必要な医薬品を服用させても5分後には『まだご飯を食べてない!』『薬飲んでない!』と抗議されるなど日常茶飯事です。でも、いちいち反論し、怒っていては仕事になりません」

 このような入所者には、「じゃ、いま食事を作ってきますから、待っていてくださいね」となだめる。そうやって30分も離れていると、当の入所者はベッドで熟睡してしまうという。

 毎日が老人相手の戦争のような現場。支えは入所者の家族からの「いつもありがとうございます」といった感謝の言葉だが、最近は「ちゃんと面倒見てくれているの?」「虐待されていない?」などと疑いの目を向ける家族も増えている。

「“あなた方の代わりに面倒見ているのに……”と思うことはあります。正直辞めたいが、他に仕事がないから仕方なく続けているのです」