耳鼻科の病気

耳の穴はやたらと刺激してはいけない

“耳に水が入り中耳炎になった”と訴える患者さんがよく来院されます。

 この訴えは多くの場合、間違いです。中耳炎は鼓膜の奥の炎症です。健康な人は、まず鼓膜の奥に水は入ってきません。

 患者さんが「中耳炎」と思っている症状の多くは外耳炎です。外耳道で軽い炎症が起こってかゆくなり、それを綿棒で何回も引っかくと外耳炎になってしまうことが多いのです。耳に入った水を取ろうとして、耳のかなり奥まで引っかいているうちに炎症を起こしてしまうこともあります。「耳が湿っているから」と、風呂に入るたびに綿棒で掃除をする人などがそうです。

 今の季節だと、花粉症の人も気をつけなければなりません。かゆくなった耳の中を指や綿棒、耳かきでかいてしまって、外耳炎を起こすことがあります。指の爪や清潔ではない綿棒、耳かきから、抗生剤が効きにくいばい菌やカビが感染することもあるのです。

 外耳炎の症状は、まずはかゆみから始まり、ひどくなると痛みや灼熱感、耳だれなどが表れます。悪化すると、鼓膜が見えなくなるほど外耳道が腫れてしまいます。患者さんは激痛、耳閉感、難聴を訴えることになります。

 むろん、炎症が治まればこれらの症状も消えますが、糖尿病や免疫不全の持病があると、傷がなおりにくいことが知られています。

 外耳炎の治療は耳の穴をきれいに消毒して、軟膏を塗るのが一番です。ただし、耳の奥まで自分で塗ろうとする人がいますがやめましょう。

 私は、米粒大をちょこっと外耳道の入り口につけるようにお勧めしています。これなら軟膏が体温で溶けて、外耳道の中全体に薄く行き渡ります。外耳道は触らないことが肝心なのです。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。