耳鼻科の病気

スギ花粉の新薬 今から飲んでも大丈夫?

 もうしばらくするとスギ花粉症のシーズンに突入します。今年は、関西地区は昨年より花粉の飛散が少なく、関東地区は多いといわれています。皆さんの所はどうでしょうか。

 今年最大のトピックスは、発売延期を経て昨年10月に発売されたスギ花粉症の舌下免疫療法治療薬「シダトレン」です。スギ花粉を含むエキス薬で、舌の下にたらしたまま2分間キープした後でのみ込むというものです。2週間薬の量を増やしていき、3週目からは同じ量の薬を毎日舌下投与します。ただし、あくまでもスギだけしか効き目はないのであしからず。

 1回目の投与は医療機関で行い、以降は患者さん自身が毎日自宅で行います。スギの木の花粉から薬用に抽出したものですから薬害は少ないと考えられていますが、理論的にはアナフィラキシーショックと呼ばれる副反応を起こす可能性があり、ごくまれに海外での報告例があります。処方する医師にも縛りがあり、舌下免疫療法の講習会に出席し、そのあとeラーニングで合格しないと処方することはできません。私は資格を取得しました。

 そもそも、アレルギーの源になるスギ花粉を少しずつ体に入れて症状を出づらくする方法は以前からありました。昔から確立されているのが、注射による方法で痛みを伴います。病院での処方も必要です。頻繁に通わなくてはいけないという難点があり、最近は行う医療機関も減少傾向にありました。

 免疫療法は、薬の投与を継続的に行うのが根幹です。家で簡易にできる舌下免疫療法は、医療機関と患者さん双方にメリットがあります。

 では、これはいつ頃から治療を開始すればいいのでしょうか。

 スギ花粉の飛散がスタートする3カ月以上前から治療を開始すると効果的です。スギの飛散の時季を考えると、今から治療を開始するのはもう遅い。スギ花粉症の皆さんは、飛散が終了する春以降にスタートするといいでしょう。新しいカレンダーに忘れずに書いておいてくださいね。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。