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【白血病】 都立駒込病院・血液内科(東京・文京区)

都立駒込病院血液内科の大橋一輝部長
都立駒込病院血液内科の大橋一輝部長(提供写真)

 白血病など血液の細胞ががん化する血液がんは、抗がん剤治療が基本。効かなければ血液のもとになる細胞を移植する「造血幹細胞移植」が行われる。同科は1986年から移植を始め、これまでの移植総数は全国屈指の約1600例にのぼる。移植は、患者から事前に採取した造血幹細胞を移植する「自家移植」と、ドナー(提供者)から採取した造血幹細胞を移植する「同種移植」に大きく分けられる。大橋一輝部長(写真)は、同科の特色をこう説明する。

「同種移植には、骨盤から採取する骨髄移植、腕の静脈から採取する末梢血移植、新生児のへその緒から取り出して移植する臍帯血移植があります。これらすべての移植法において満遍なく豊富な経験をもち、患者さんに最適な移植を迅速に行えるのが当科の強みです」

 その実績から厚労省が指定する「造血幹細胞移植拠点病院」(現在、全国5施設)になっている。移植患者のうち、95%以上を他施設からの紹介が占め、多くが2回目の移植や薬の効かない難治性の白血病患者だ。

 白血病の場合、ほとんどが家族や骨髄バンクを介して造血幹細胞を提供してもらう同種移植になる。

「同種移植は、重篤な合併症を避けるために原則、患者さんとドナーの白血球のタイプ(HLA)がすべて合致していることが要件でした。しかし、兄弟間で合致する確率は25%、両親や親戚では1%以下です。そこで、骨髄バンクでもドナーを探すのに時間がかかる場合には、近年、半分だけ合致すれば移植の対象にする半合致移植が行われるようになりました。当科でも始めていて、実施数は増えています」

 半合致であれば、ほとんどの患者が家族からドナーが見つかるが、全合致よりは合併症が出やすい。

 また、同種移植の3種類の移植法にも一長一短がある。末梢血移植は骨髄移植より効果が強い半面、合併症が出やすい。臍帯血移植はドナーが見つかりやすく合併症も出にくいが、進行期の症例では効果が弱く再発しやすくなる。

 患者の進行度や状態から、最適な移植法はどれか、全合致か半合致か、の組み合わせを見極めるのが、その施設の腕の見せどころになる。

「再発させない、合併症が少ないことをトータルで考え、成功させなくてはいけません。まだ、すべての移植法ができる施設は限られるので、セカンドオピニオン、サードオピニオンは必ず受けた方がいいと思います」

 同科で移植を受けた患者の約半数は再発なし、合併症なしの長期改善で社会復帰しているという。

 また、白血病の中でも慢性骨髄性白血病は近年の分子標的薬の登場で9割以上は移植の必要がなくなった。しかし、高額な薬代の負担に苦しむ患者も多い。同科では、がん細胞が消えて一定期間過ぎた後に薬を中止する投与法を行っている。

「“分子標的薬の投与中止法”は、まだ研究段階ではありますが、だいたい半数くらいの患者さんが薬を止めることができています」

 明治12年開設。エイズ診療中核拠点病院、東京都のがん診療のまとめ役・推進役を担う。
◆スタッフ数=血液専門医・常勤7人、移植コーディネーター2人
◆初診患者数(2013年度)=520人
◆造血幹細胞移植実施数(2014年度)=114件