役に立つオモシロ医学論文

食事で乳がん予防

オリーブオイル
オリーブオイル(C)日刊ゲンダイ

「地中海食」をご存じでしょうか。イタリアやスペインなど地中海沿岸諸国の料理のことで、オリーブオイル、野菜、豆類、果物、魚介類などを多く摂取し、乳製品や肉類は控えめにする、という食事スタイルです。

 この地中海食の有用性についてはこれまでさまざまな報告が出ていますが、「地中海食の積極的な摂取と乳がん発症リスクの関連」を検討した報告が米国医師会の内科専門誌電子版に9月14日付で掲載されています。

「PREDIMED」(プレディメド)研究と呼ばれる地中海食と心臓病との関連を検討した「前向き研究」のデータを、2次的に解析したものが、この報告です。参加者の中から、乳がん既往のない60~80歳の女性4282人が対象となりました。①通常の食事療法(1391人)②オリーブオイルを積極的に摂取する地中海食(1476人)③クルミやアーモンドなどのナッツ類を積極的に摂取する地中海食(1285人)の3群を比較し、乳がん発症が検討されています。なお、年齢、アルコール摂取、ホルモン療法の有無など結果に影響を与えうる因子は調整して解析しています。

 中央値4.8年の追跡期間中、乳がんの発症頻度は年間1000人当たり、通常の食事で2.9件、オリーブオイル群で1.1件、ナッツ群で1.8件でした。乳がん発症リスクは、通常の食事療法と比較してオリーブオイル群では68%低く、ナッツ群では統計的に有意な差はないものの41%低い傾向でした。また、オリーブオイル、ナッツの両群を合わせた地中海食全体では57%のリスク低下が示されました。

 先行する臨床試験の2次解析ではありますが、食習慣が乳がんのリスクを低下させる可能性が示唆された貴重な報告と言えそうです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。