風邪の治療に抗生物質は必要でしょうか? この問いに最近のテレビや医療本などでは、「風邪に抗生物質を処方するのはヤブ医者だ」というような発言が見受けられます。
風邪はほとんどがウイルスによる病気です。特に薬など飲まなくても、普通は自然に治る軽い病気です。それに対して、抗生物質は細菌感染の治療薬。その使用には意味がない、というのがその理屈です。
この理屈自体は間違いではありません。しかし、実は風邪症状でも抗生物質を使用することにより、「症状の悪化が防げた」という研究結果もあります。
今年のJAMAという一流の医学誌に載った論文がそうです。風邪をこじらせて、胸がゼーゼーして呼吸が苦しくなる気管支炎に繰り返しかかるお子さんでは、そうなる前の風邪症状の時に「アジスロマイシン」という抗生物質を5日間飲むと、飲まない場合より3割以上風邪の悪化が予防されたというのです。
これは、どんな細菌やウイルスが原因であるのかにかかわらず成立する効果です。おそらくこの種類の抗生物質には、抗菌作用以外に免疫や炎症の調節作用があると考えられます。
このように、全ての風邪に抗生物質が不必要、ということではないのです。
風邪の性質によって、うまく薬を使い分けるのが重要なのではないでしょうか。
医者も知らない医学の新常識