有名病院 この診療科のイチ押し治療

【うつ病】三楽病院・精神神経科(東京・御茶ノ水)

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 企業が行う社員のメンタルヘルス対策として、今月からストレスチェックの義務化が始まった。数ある職種の中でも、うつ病などの精神性疾患による病気休職が特に多いのは学校教員。全国の国公立学校では、年間約5000人の教員が精神性疾患で休職している。

 同院は東京都教職員互助会が運営していることから、同科の受診患者も半数以上は教職員が占めている。真金薫子部長は「教育現場は深刻さを増している」と言う。

「教職員に多いのは、うつ症状が表れる適応障害やうつ病です。発症頻度が高い背景には、1人の先生が多くの仕事を抱えていることもあります。授業以外にも個々の生徒の生活面、それぞれ価値観の違う保護者にも対応する必要があります。それに学校組織や行事などの運営の仕事もあって、仕事内容の種類もとても多いのです」

 うつ病は本来、仕事を休んで休養を取ることが大事。しかし、教員は子供を相手にする対人関係の仕事上、一定期間スッパリ休むのはなかなか難しく、本人の挫折感も大きい。症状が軽いうちであれば、なるべく仕事を休まずに済むよう治療することを心がけているという。

「薬も処方しますが、重要なのは職場との連携です。具合の悪い時期は自分の受け持つ授業だけになるべく専念して、一時的に他の仕事を減らしてもらう職場のサポートが大切になります。休みを取るかどうかギリギリの状態の人は、『ナイトホスピタル』を利用してもらうこともできます」

 ナイトホスピタルは同科の特色のひとつで、27床ある精神神経科のベッドに入院し、そこから職場へ通う。単身で生活リズムが崩れやすい人、調子が悪いが出勤したい人など、ほぼ常に1~3人の利用者がいるという。体調が悪ければスタッフにすぐ相談でき、安心感がある。保険も利いて、一般患者の利用も可能だ。

「でも、公立学校は教員数が決められているので、仕事量が減らせないこともあります。どうしても仕事が無理な場合、休んで療養に専念することになりますが、その後、教壇に立てるまでの回復には長期間かかることが多く、復職に向けた治療プログラムが非常に重要になります」

 同科は東京都教育委員会の委託で教員の“職場復帰訓練”を実施している。訓練期間は10週間で、30~31回の通院でプログラムをこなす。また、これとは別に同科独自の教員向け復職プログラムもある。「リハビリ入院」といって、合宿のように複数人で入院して行う。

「リハビリ入院は、2~6人くらいが1組になって6週間行います。みんなで規則正しい生活を送り、栄養バランスの取れた食事、運動、心理カウンセリング、患者さん同士が語り合ったり、物事の考え方を見直したりするセミナーなどの内容で組まれています」

 これらのプログラムによる復職率は8割以上という。しかし、復職しても一気に張り切ると再発する。結局、職場の雰囲気やサポート、受け入れ態勢が肝心になるという。

 公益社団法人東京都教職員互助会が運営。1988年に職域病院から一般病院へ移行。
◆スタッフ数=精神科医6人、臨床心理士6人(うち常勤1人)
◆年間初診患者数(2014年度)=874人(うち、うつ症状のある人は470人)