仕事と治療は両立可能 「がん」で会社を辞めてはいけない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がんと診断されても、決して会社を辞めてはいけない――。こう言うのは、「健康増進クリニック」の水上治院長だ。欧米からの医療情報を基に、西洋医療に高濃度ビタミンC点滴療法などの補完医療を加え、がん患者に対する心身両面からのサポートに力を入れている。

 水上院長が問題視しているのは、「がんハラ」だ。

「がんを宣告され、将来が見えないような時に『がん治療と仕事は両立できないだろう』と言われ、追い詰められたような気持ちになって辞めてしまう患者さんがたくさんいるのです」

 職場でのがんハラとともに、医師からのがんハラもある。

 家電メーカーで部長職に就いていたAさん(50代)は、首のしこりから精密検査を受けたところ、胃がんが発覚。さらに首、わきの下、リンパ節に転移していた。ステージⅣで手術が不可能な末期がんという診断で、抗がん剤治療を受けることになった。

 医師からは「抗がん剤治療は副作用がつらい。仕事を続けながらの治療は困難」と言われ、職場でも「治療に専念したほうがいい。仕事なんて、いつでも再開できるのだから」と言われた。結局、Aさんは辞表を出した。

 ところが、抗がん剤治療はうまくいき、2年後には転移がんがすべて消えた。残っているのは胃の原発がんだけとなり、手術で切除。その後、10年経っても再発していない。

 Aさんは体は元気を取り戻したが、再就職先が見つかっていない。子供はいま高校生で、大学まで進学させたいと思っている。しかし、妻のパートの給料とこれまでの貯金を切り崩しながら生活している現状では難しい。今後、再発した場合、治療費を払えるだろうかという不安もある。Aさんは「抗がん剤治療の副作用には有休でも対処できた。仕事を辞めたことを猛烈に後悔している」と話している。

■つらい副作用と手を切るのも可能な時代

 水上院長は、「治療をうまくいかせるためにも、仕事をして社会と関わっていることが重要」と考えている。

「不安は、肉体のつらさを何倍にも膨れ上がらせます。退職や休職で自宅にいれば、病気への不安、経済的な不安、再就職の不安は一層高まり、ストレスが増し、免疫力にも影響を与えます」

 水上院長が担当した64歳男性は会社役員。5年半前にステージⅢの進行性大腸がんが見つかり遠隔リンパ節転移もあった。手術後、仕事を続けながら抗がん剤治療を受けた。抗がん剤の副作用があっても、「仕事をしていると気がまぎれる」と辞めることはせず、半休を取ったり、無理のない勤務をしながら対処した。現在はまた仕事の第一線で活躍している。

「適当に休みながら、とにかく仕事を辞めない。ある程度、会社の理解は必要とはいえ、自分から進んで辞めてはいけない」

 水上院長が取り入れている高濃度ビタミンC点滴療法は、免疫力を上げながら抗がん剤の副作用を軽減する効果がある。高濃度ビタミンC点滴療法に限らず、抗がん剤の副作用を軽減する薬はいくつもある。副作用で苦しむ人は、医師がそれらの薬をうまく使いこなせていない場合もある。

「会社を辞めなければならないほどのつらい副作用と、今は手を切ることが可能な時代。まずはその方法を探るべき」

 2人に1人が“がん”と言われる時代。覚えておくべきだ。

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