健康は住まいがつくる

【アレルゲン】せき・喘息は室内のカビが原因

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
クロ、コウジ、アオの3種類が代表

 アレルギー疾患の原因物質(アレルゲン)といえば、ハウスダストの中に含まれる「ダニの死骸やふん」がよく知られるが、あなどってはいけないのは「カビ」だ。

 一般に「カビ」と呼ばれているのは真菌(キノコ、カビ、酵母)のひとつで、人に健康被害をもたらすのは室内の空気中やハウスダストの中にいる微生物のカビと酵母(ここではカビに統一して表記)になる。

 住宅環境のカビを研究する工学院大学・建築学部の柳宇教授はこう言う。

「現在、Ⅰ型アレルギーを起こす真菌は80属200種類が確認されていますが、一般の室内で70~90%の確率で検出されるカビは、クロカビ、コウジカビ、アオカビの3種類です。いずれもアレルゲンになり、汚染がひどい場合は特定のカビのみが多く検出されるケースが目立ちます」

 汚染とは、室内でカビが大量に増殖している状態だ。アレルギー治療の現場でカビが注目されることは少ないが、それは国内のカビアレルゲンの研究が遅れているせいでもあるという。

 実際に、イタリアの大規模疫学調査では、アレルギー患者の約20%が少なくとも1種のカビに対してアレルギー反応を示すことが明らかになっている。北欧では、カビ汚染の原因となる局所的に湿度が高い状態が、せき・喘息のリスクを2倍高めると報告されている。

 日本の子供を対象にした疫学調査でも、喘息、アレルギーなど少なくともひとつの疾患をもつ患者群に、結露・カビの発生が関与していることが認められているという。

「この研究の環境調査では、患者群の家は室内湿度、空気中に浮遊するカビ濃度、ハウスダスト中に堆積するカビの量が、アレルギーのない群に比べて顕著に高いことが示されています。また、ハウスダスト中のカビの量は、室内湿度に比例して多くなることが明らかになっています」

 そもそも、カビは屋外の土壌中や植物に寄生して生息しているものが、外気と一緒に室内に侵入する。そして、栄養源と温湿度条件がそろえば簡単に増殖する。栄養源となるものは、建材やハウスダストなど住居環境内に豊富にあるという。

「ただし、カビは種類によって湿度70~80%の場所で増殖する好乾性、湿度80~90%を好む耐乾性、湿度90%以上の場所に生える好湿性に分けられます。好湿性のクロカビは結露しているような非常に湿度が高い場所、コウジカビやアオカビは好乾性なので特にハウスダストなどの中に生えます。ですから1種類のカビが多く検出される場合には、だいたい発生源が予想できるのです」

 次回は、室内のカビ対策をアドバイスしてもらう。