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【照明と睡眠】職場の照明不足が睡眠障害を招く

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 寝る2~3時間前の室内の照明はできるだけ暗くし、赤っぽい光(暖色光)で過ごすことが睡眠の質を高めるコツだ。

 では、朝起きて目覚めをよくするには、どのような照明がいいのか。生体リズムに及ぼす光の研究をしている福岡女子大学・国際文理学部の森田健教授が言う。

「蛍光灯でいえば昼白色の青白っぽい光(冷色光)で、できるだけ明るくした方が目覚めはよくなります。これは夜の照明とは真逆で、光の波長が短い青白っぽい光には睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑制し、活動に向けた体の状態を整える作用があるからです」

 さらに、カーテンをしっかり開けて、外の太陽光を室内に取り入れることも重要になる。屋外の強い光量は、25時間周期で刻まれている人の生体リズムを、生活する24時間リズムにリセットする効果があるからだ。

「一般家庭の居間の照明の明るさは、せいぜい250~300ルクスくらい。生体リズムをリセットするには、最低でも5000ルクスくらいは必要です。これは曇天の窓際くらいの明るさですが、室内照明だけでは到底足りません」

 たとえ朝の太陽光が直接入らない寝室や居間であっても、カーテンを開けた窓際は5000ルクスくらいの明るさは十分得られる。窓際まで隣家の壁があるなど、まったく室内に屋外の光が入らないような室内環境の場合には、朝の散歩などで太陽光を浴びるのがいい。

■熟睡できない人は外出や窓際が効果的

 日中の照明の光の量も見逃せない。昼間、ずっとオフィス内で過ごしている人は、照明が暗すぎると睡眠障害を起こす可能性がある。

「一般的なオフィスの照明は500ルクスくらいだと思います。屋外の自然光の数万ルクスと比べて非常に少ない日中の光環境下で過ごしているわけです。日中に明るい屋外で過ごしている人と、室内で過ごしている人の睡眠中の体温を比較する研究を行ったのですが、日中にずっと室内にいる人の方が睡眠中の体温が下がりにくいのです。つまり、夜のメラトニンの分泌が悪くなるのです」

 夜、なかなか寝付けない、熟睡できないという人は「職場の照明が暗い」ことが原因とも考えられる。日中は、休憩時間や昼休みに外に出て太陽光を浴びたり、オフィスにいても窓際に行くと対策になる。

 もちろん、夜遅くまでPCを使っていたり、寝る直前までテレビを見ているのも睡眠によくない。

「モニターから発する光には、波長の短い青や緑の光が多く含まれます。それがメラトニンの分泌を抑制するのです」

 室内の照明は、生活のリズムに合わせて量と色(波長)を上手に使い分けることがポイントだ。