健康は住まいがつくる

刺されると強いかゆみ トコジラミの被害が一般家庭に拡大中

怪しい虫刺されには要注意
怪しい虫刺されには要注意(提供写真)

 室内の害虫被害はダニや蚊などが代表的だが、近年、問題視されているのが「トコジラミ」だ。名前は似ているがアタマジラミやケジラミなどとは異なり「カメムシ目」のグループに分類され、別名「南京虫」とも呼ばれている。

 健康被害は、吸血するときに注入される唾液物質のアレルギー反応によって引き起こされる強いかゆみ。刺されたときに痛みを感じることはほとんどないが、刺し口の皮膚に赤い発疹が表れるのも特徴だ。

 日本でのトコジラミ被害は1960年代ごろまでは一般家庭に普通にみられたが、70年代に入ってほとんどなくなった。それが2007年ごろから再び急増している。どういうことなのか。日本環境衛生センター環境生物・住環境部の武藤敦彦部長が言う。

「最初は、ホテルや旅館で被害の増加が始まりました。欧米ではひと足先に2000年以降からトコジラミ被害が社会問題になっていて、海外渡航者の荷物にまぎれて日本に広がったと考えられています。その証拠に、欧米でみられる家庭用殺虫剤のピレスロイド剤に強い抵抗性をもつトコジラミが最初から見つかっています」

 いまでは宿泊施設から一般家庭にまで被害が拡大してきているという。営業施設は保健所の監視対象となっていることから報告・相談を控える傾向があるため、現在は都内保健所のトコジラミ被害の相談件数の約8割は一般住宅が占めている。

 トコジラミの成虫の大きさは5~8ミリで、茶褐色の平たい体つきをしている。夜行性なので、昼間は畳や家具と床のすき間、ベッドマットの下やすき間、壁に掛けた額やカレンダー、カーテンの折り返しなど、暗くて狭いすき間に潜んでいる。夜中、人が寝静まるとはい出てきて血を吸うのだ。(写真は「日本環境衛生センター」提供)

「トコジラミは衣類の中に潜り込んで刺すことはなく、体の露出部を刺します。ですから、朝起きて寝間着の袖口や首回りなどに沿って、並んだ虫の刺し口があるようなら室内に潜んでいる可能性があります」

 明かりをつけるとすぐ隠れてしまうので、数が少ないと発見することは難しい。大量に繁殖すると潜む場所の周辺に糞による黒っぽいシミが点々と見られるようになるという。

「対処法は、とりあえず隠れていそうな場所に家庭用殺虫剤を吹きかけて試してみてください。それでダメなら駆除業者に頼むしかありません。各都道府県にあるペストコントロール協会に連絡すれば、地域の業者を紹介してくれます」

 外国人観光客の移動や増加とともに、今後もトコジラミ被害の拡大は必至。怪しい虫刺されには十分注意しておこう。