当事者たちが明かす「医療のウラ側」

視力が低下すると「幻覚」が見える そのメカニズムと原因

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「天井から人がのぞいている」――。目の見えない人がこう言って、天井を指さしたらどう思いますか? きっと、ウソを言っているか、頭がおかしくなった、と考えるのではないでしょうか。

 しかし、目がまったく見えなくなった人や低視力の人の10人に1~4人程度は「幻覚」を見るといわれています。それが「シャルル・ボネ症候群」です。視力が低下した人が、そこにはない人物、動物、建物が見えるという症状です。白内障や加齢黄斑変性症などで視力が落ちた人などからの報告が多いようです。

 その原因はハッキリしていませんが、人が物を見るシステムに原因があるといわれています。

 人は目から送られてきた映像を脳が瞬時に判断できるよう、“これまで見てきた映像で補強する”というシステムがあります。視力が低下して見えなくなってもこのシステムが働いているために、実際にはそこにないはずのものが見えるというわけです。

 それは幻覚というより夢ではないのか? そう思う人もおられるでしょう。しかし、本人に聞くと、「映画のように映像はハッキリしていてリアリティーがある。夢ではない」と言います。人によっては「大きな歯や目に追いかけられた」「歩いていた道がいくつもに枝分かれして道が迫ってきた」などと訴えます。

 こうした幻覚はふいに訪れるため、コントロールできずに恐怖心を持つ人も少なくありません。しかし、他人に話をすると「頭がおかしくなったのではないか」とバカにされると思って黙っているのです。

 最近、機能性MRIを使って、シャルル・ボネ症候群がどのように発生するかの研究が行われています。それによると、幻覚を見るときには脳の視覚部分が活発化し、例えば「幾何学模様の幻覚」ならこの部位、「歯や目の幻覚」ならあの部位……というように、脳のどの分野が働くとどのような幻覚を見るかが分かってきています。

 本格的な解明はこれからですが、視力が低下すると幻覚に悩まされる可能性がある。このことを知っておいた方がいいかもしれません。