薬に頼らないこころの健康法Q&A

入試前日に眠れない!? 就寝「16時間前」に起きるリズムを作る

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授
井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ
高校受験の直前まで深夜放送を聴いているような中学生でした


 高校受験を目前に控えた中3男子です。もともと試験の前日や部活の試合の前日は眠れない方でした。明日のことを考えたら、早く眠ったほうがいいことぐらいわかっています。でも、眠ろうとすればするほど目がさえて、なかなか眠れません。塾の先生の勧めもあって1月に2校、2月にも2校の試験を受けます。2月下旬の最後の高校が第1志望の高校なので、3校は練習のつもりです。すでに最初の高校は受けたのですが、前日はやはり眠れなくて、午前1時過ぎまで起きていました。難しい高校ではなかったので合格しましたが、こんなことでは難関校の前日はますます眠れなくなりそうで、とても不安です。


 君のケースは、私自身が高校受験で失敗したときと同じパターンなので心配です。私は、高校受験の直前まで深夜放送を聴いているような、生活習慣が最悪の中学生でした。

 当時の「オールナイトニッポン」では、まだ無名時代のタモリさんや、後に精神分析家として大家となる北山修先生(九州大学名誉教授)が偽名で出ていたりして、異常な活況ぶりでした。この話を語り始めると字数がつきますので、ここでは控えます。

 ともあれ、私はこんな調子でしたので、第1志望校の入試の前夜に眠れず、見事に落ちました。1月になってもまだ夜更かしを続けるような生活ぶりでは、試験に合格しません。君は私のような愚か者のマネをしてはいけません。

 君の年齢なら、眠り始めてから8時間は目覚めません。目覚めてから16時間後に眠くなります。となると、眠りたい時間の16時間前に起きるリズムをつくればいいわけです。入試の前日に23時に眠りたいのなら、その16時間前の7時には毎朝必ず起きるようにしましょう。

 これは、土日も同じです。君は今、おそらく土日は少し遅く起きているだろうけれど、これは不可! この時期は「第1志望の試験日の朝、体調がベストになるように」することを目標にすべきです。だから、土日も朝寝坊はしないで、早く起きること。

 私は、いっそのこと、さらに2時間前倒しすることをお勧めします。つまり、「5時起床、21時就床」のリズムです。そもそも入試の日の朝は、遠方の試験会場まで行くことを考えると、早く起きないといけないでしょう。もし、さらに早く起きて早朝の電車に乗れれば、朝のラッシュアワーを避けることができます。入試の当日に混雑した電車に乗るのは、できれば避けたいものです。

 5時起床を繰り返せば、その16時間後の21時に眠くなるリズムができあがります。君の体は16時間連続して起きていると、力尽きて眠るようにできているのです。5時起床だと、21時ごろには眠くて仕方がなくなります。もし仮に、試験前夜の高ぶりで眠れなくなったとしても、1時間後には眠れるでしょう。最悪の場合でも、18時間も連続して目覚めていられませんから、23時には力尽きます。その場合は、6時まで眠って、トータル7時間のまずまずの睡眠時間を確保することができます。

 睡眠不足のぼんやりした頭で入試に向かうのは危険です。私の場合、最初の科目の英語で想定外のリスニング問題が出て、ここで不注意なミスを連発し、見事に落ちました。寝不足だと、想定外の事態に直面してパニックに陥りやすいのです。

井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。