当事者たちが明かす「医療のウラ側」

ろくに診察もせず状況悪化 都心の病院の“年末年始”が恐ろしい

(C)日刊ゲンダイ
40代開業医が語る

 医師不足が言われて久しいのですが、こと都心では無縁なものだと思ってきました。しかし、先日、ある患者さんの話を聞いて、他人事ではないと知りました。

 話題の主は小学校低学年のお子さんです。昨年の12月28日に公園でボール遊びをしていたのですが、ボールを追いかけて道路に飛び出したところ、車にはねられました。

 お子さんは2~3メートルも飛ばされたわりに元気だったようですが、念のため、救急車で病院に向かいました。

■有名な総合病院から受け入れを拒否され

 問題は病院の対応です。その公園のすぐ近くには有名な総合病院があったのですが、「いまは医師が少ないので」と受け入れを拒否。救急車が他の病院を回ってもどこも受け入れ先がなく、結局、このお子さんは最初の有名総合病院に担ぎ込まれました。

 ところがその病院では「元気そうだから大丈夫でしょう」とろくに診察もせずに、そのままお子さんを帰してしまったのです。その病院がある地区は中学3年生まで医療費が無料です。普段、1日数万円の差額ベッド代を払っても平気なお金持ち患者さんばかり診ているので軽くみたのかもしれません。

 その後、お子さんは自宅で熱を出し、脚のすねを痛がったそうです。それでも正月明けまで我慢して改めてその有名総合病院に行ったところ、医師から「骨が折れてます。すぐに手術しましょう」と言われたそうです。さらに、「すぐに手術していれば大きな問題はおきませんでしたが、折れてから時間が経っているので脚の骨がうまくつかないかもしれません。また、くっついてもその部分の骨が太くなる分、他の部分に負担がかかるので再骨折しやすくなるかも」と言い放ったといいます。

 むろん、親御さんはこの言葉にカンカンです。しかし、親御さんもお子さんも「診ていただいている」という思いがあるせいか、我慢したそうです。このお子さんは運動好きなのに、いまだに松葉杖をついています。ひどい話です。

 しかも、この病院は「三次救急」を看板に出しており、若手医師の育成などをウリにしているのです。確かに年末年始の医師の配置が大変なのは分かります。みんな「年末年始くらい休みたい」と考えるのは当然です。しかし、三次救急の看板を掲げている以上、シフトをしっかりしてまっとうな医療を行うべきでしょう。