独白 愉快な“病人”たち

俳優・石倉三郎さん(69)痛風

俳優の石倉三郎さん
俳優の石倉三郎さん(C)日刊ゲンダイ
尿酸値は11超えでも症状なし。医者の診断は「発症しない痛風ですね」

 10年前の夏にね、風邪かなんかで医者に行ったんですよ。で、「血液検査しときましょう」って言われて調べたら、尿酸値がものすごく高かった。通常は7で異常値、ところが俺は11・4もあった。医者は「すごくだるいでしょ?」「疲れるでしょ?」って言うけど、心当たりが全然ない。「石倉さんの場合は発症しない痛風ですね」って診断されました。

 痛風といえば、足先が痛いとか、風が吹いても痛いって聞いていたのに、症状の出ない痛風があるなんて初耳。このタイプは自覚症状がないから、気がついた時にはいきなり腎臓を“突き刺し”て、人工透析になるらしい。だから怖いんですよ。

 ちょうどその後、出演したテレビの健康番組では糖尿病だって診断された。「え? 痛風は知ってるけど糖尿は知らねえな」なんて言いながら、病名がまた増えました。

■重りの入った靴でウォーキング

 痛風で山ほど薬を処方されたけど、手は付けなかった。薬なんて飲まなくても、歩いて水飲めばいい。

 安静になんてしたら“病負け”するからね。

 どうせなら効率的にと思って、両足に1.5キロの重りの入ったウオーキングシューズを買い、毎日1時間半歩き、水を1.5リットル飲むことにした。靴は手で持つと重いけど、履いてしまえばそうでもないし、1時間歩けば2時間分の効果があるっていうんだから、そっちのほうが都合がいいからね。歩いている間はとにかく休まない。信号待ちにぶつかったら、正面で待たずに横の歩道を選び、止まらずに歩いた。夏だったから、途中、ふわーっと眠くなって記憶が遠くなり、熱中症になったことが2回ぐらいあったかな。それを所(ジョージ)に話したら、経口補水液の「OS-1」を送ってくれて、今度はそれを飲みながら歩いた。

 3カ月後には、69キロあった体重が7キロ減。尿酸値も血糖値も正常値に戻った。ズボンがゆるくなって、服を買い替えて逆にカネがかかりましたね。以来、2~3カ月に1度は血液検査して、数値が上がったら集中的に歩くようになったよ。

■ウマい酒のために歩いて正常値に戻す

 それから、1年前の春、地方ロケ中に腸閉塞になった。医者は絶対安静にしろっていう診断書をくれたけど、その時は点滴や応急処置でなんとか痛みは治まり、仕事もこなした。後日、精密検査をと思ったけど、予約は再来月になるって言うからその後は行かずじまい。大病院は通えるもんじゃないね。

 こうして歩いて体を戻したのも、すべてはウマい酒を飲むため。飯は基本1日1食。腹が減ったら食べる。食事に制限はないね。食べたいものは食べるし、好き嫌いもない。ただ、撮影で昼飯が遅くなると、その後の酒のために食べないこともあるかな。

■18時間半飲んでも二日酔いなし

 酒は、毎晩ビール2~3本に焼酎か日本酒が3~4合。飲むとなったら夕方6時から朝の6時まで飲むから、日本酒を1~2升空けることもありますよ。今年の正月、昼の3時から飲み始めて朝の9時半まで、18時間半も飲んだ。それでも二日酔いにならないから、元気過ぎて自分が怖くなってね。さすがに翌日は断酒したよ。

「60歳すぎたら体にガタがくる」なんていわれているけど、俺は何も変わらないね。69歳なんて戸籍上の年だし、あと何年生きられるか怯えるように年を数えるのも意味がわからない。70歳になって変化があったら、「古希」というやつはやっぱりすごい、とでも言うのかもなあ。

▽いしくら・さぶろう 1946年、香川県生まれ。21歳で東映に入社。レオナルド熊とのコンビ、コント・レオナルド等を経て、NHK連続テレビ小説、「下町ロケット」などに出演。役者人生50周年、初主演映画「つむぐもの」が有楽町スバル座ほか全国順次公開中。