当事者たちが明かす「医療のウラ側」

薬剤師が危機感 「長期処方」に透けて見える患者の医療不信

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
首都圏の40代薬剤師

 薬の長期処方を希望する患者さんが当たり前になってきたことに危機感を覚えています。

 かつて、保険診療においては原則最大14日分しか薬を出せませんでした。ところが医療法の改正で、麻薬や睡眠、向精神薬や発売間もない新医薬品などを除けば、医師が認めれば何日分でも出せるようになっています。

 そのせいか、大学病院などでは99日処方が当たり前になっています。実際、近くの2つの大学病院の処方箋の多くは99日処方です。

 なぜ、99日かといえば、電子システムが3ケタの処方を想定しておらず、それ以上の打ち込みができないからです。逆にいえば、システムが3ケタまで打てれば、150日処方、200日処方になっているかもしれません。

 しかし、本当にこんなことでいいのでしょうか。先日、調剤薬局にいらした99日処方の方は、糖尿病の患者さんでした。つまり、この患者さんは3カ月に1度しか病院に行かないわけです。この間、患者さんは自身で体調管理するしかないわけです。医師として無責任なのではないでしょうか?

 それに比べて開業医の先生方は、できるだけ1カ月に1度は病院に来ていただけるよう、長期処方は避けるようです。ある診療所では、14日間以上、原則薬を出さないようにしています。

 むろん、月に1度は患者さんに来てもらわないと再診料をいただけない、という経営上の問題もあるのでしょう。しかし、慢性期の病気の患者さんを診ている医師なら、月に1度の診察は当然だと思います。私は、患者さんの体のことは開業医の先生の方が考えているように思います。

 ならば、なぜ患者さんは大学病院に行くのでしょう? 万一、心臓などの重大病にかかったとき、大学病院の診察券があった方がいい、と思っているのかもしれません。しかし、“どうせ病院に行っても薬を出してもらうだけで、病院は何もしてくれない”という気持ちもあるのではないでしょうか。つまり、患者さんの医療への信頼や期待が薄らいでいるのです。

 医師が患者さんと向き合い、その期待に応えなければ、日本の医療は国民からそっぽを向かれる気がしてなりません。