漢方薬局に相談にいらっしゃる方の中には、漢方薬剤師としてよりも“心理カウンセラー”としての対応を必要とされている場合があります。相談者がその時に感じている不調やつらさを軽減する漢方薬は必要に応じて処方しますが、「話を聞いてくれる人が身近にいれば、もしかしたらここまで悪化しなかったかも……」という方もいます。
3年ほど前、小学生低学年のお子さんの登校拒否の相談にいらした40代の女性は、見るからにストレスを抱えている様子でした。「なぜ、子供が学校に行きたがらないのかまったく分からない」と言います。
ご本人は、いわゆるいい高校、いい大学を卒業し、希望していた会社にすんなり就職。しかし、今話題になっているように、子供の保育園がなかなか決まらなかったため会社を辞め、専業主婦になったそうです。ついつい子供の世話が過剰になってしまい、怒ってしまうことも多い。その都度、反省するのですが、なかなか改まらない――。
お子さんは虚弱体質で、疲労感が強く、食が細い。お母さんとの関係から、お子さんの気持ちが萎縮してしまい、それによって「肝」が弱くなり、血流が悪くなったり冷えやすくなったりしていると考えられました。そこで、親子ともに気を補うタイプの漢方薬をお勧めしました。一緒にいらっしゃった時は、十分にカウンセリングの時間を設けました。
親の対応が、子供の不調を招いているケースがあります。それに気づくのも漢方薬剤師の仕事。この親子はゆっくり時間をかけ、お母さんもお子さんも心身ともに健康な状態を取り戻しました。でも、誰かに相談するきっかけを得ずに時間が経っていたら、親子ともにこじれてしまい、健康に至るのにかなりの時間を要したかもしれません。
漢方達人をめざせ!