漢方達人をめざせ!

子の不調の原因は親

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 漢方薬局に相談にいらっしゃる方の中には、漢方薬剤師としてよりも“心理カウンセラー”としての対応を必要とされている場合があります。相談者がその時に感じている不調やつらさを軽減する漢方薬は必要に応じて処方しますが、「話を聞いてくれる人が身近にいれば、もしかしたらここまで悪化しなかったかも……」という方もいます。

 3年ほど前、小学生低学年のお子さんの登校拒否の相談にいらした40代の女性は、見るからにストレスを抱えている様子でした。「なぜ、子供が学校に行きたがらないのかまったく分からない」と言います。

 ご本人は、いわゆるいい高校、いい大学を卒業し、希望していた会社にすんなり就職。しかし、今話題になっているように、子供の保育園がなかなか決まらなかったため会社を辞め、専業主婦になったそうです。ついつい子供の世話が過剰になってしまい、怒ってしまうことも多い。その都度、反省するのですが、なかなか改まらない――。

 お子さんは虚弱体質で、疲労感が強く、食が細い。お母さんとの関係から、お子さんの気持ちが萎縮してしまい、それによって「肝」が弱くなり、血流が悪くなったり冷えやすくなったりしていると考えられました。そこで、親子ともに気を補うタイプの漢方薬をお勧めしました。一緒にいらっしゃった時は、十分にカウンセリングの時間を設けました。

 親の対応が、子供の不調を招いているケースがあります。それに気づくのも漢方薬剤師の仕事。この親子はゆっくり時間をかけ、お母さんもお子さんも心身ともに健康な状態を取り戻しました。でも、誰かに相談するきっかけを得ずに時間が経っていたら、親子ともにこじれてしまい、健康に至るのにかなりの時間を要したかもしれません。

久保田佳代

久保田佳代

父は乳児院院長、母は薬剤師、長女は歯科医、次女は眼科専門医という医療一家に産まれたが、昨今の臓器医療である西洋医学とは違い、人に向き合い、カラダとココロの両面から治療が行える漢方を志し20余年経つ。昭和薬科大学卒業、老舗漢方薬局を経て、「氣生薬局」開局。サプリメントアドバイザー、漢方茶マイスター、日本プロカウンセリング協会1級など多数資格取得。「不妊症改善における実力薬局100選」に選ばれている。