有名病院 この診療科のイチ押し治療

【骨折の専門治療】東京西徳洲会病院外傷センター(東京都昭島市)

左は東京西徳洲会病院外傷センターの松村福広センター長
左は東京西徳洲会病院外傷センターの松村福広センター長(提供写真)
大病院が嫌がる緊急手術「複雑骨折」の駆け込み寺

 骨折は整形外科が扱う疾患だが、緊急手術を要する突発的な骨折(急性期の外傷)となると、すべての病院が受け入れられるわけではない。一般的な整形外科は人工関節など慢性期の手術で日程がいっぱいなうえ、体の部位ごとに専門分野が区別されている。そのため、交通事故や高齢者の転倒のように、全身の骨折にすぐに対応することが難しいのだ。

■365日、24時間対応可能施設

 そこで近年、国内の病院も海外に倣い、一般の整形外科と分離した「外傷センター」を設ける施設が出始めている。同センターはそのひとつだ。四肢(上肢、下肢)と骨盤の骨折治療を中心に、365日24時間体制で対応している。松村福広センター長(顔写真)はこう言う。

「患者さんの9割は手術を必要とし、うち3割は24時間以内に手術を行わなければ、元の状態に戻すのが難しくなる。とくに救急隊員たちが搬送先を探しづらいのが、夜間や休日に開放骨折を起こした患者さんです。当センターには東京だけでなく、山梨、埼玉、神奈川からも患者さんが搬送されてきます」

 開放骨折とは、皮膚が裂けて骨が外に出ているような重傷の骨折のこと。他にも、血管が切れて手や足に血液が通わない阻血を伴う骨折や、股関節の脱臼骨折などは、時間がたつと合併症を生じる恐れがあるので緊急手術が必要だ。夕方や土日の子供の骨折も多いという。

■目標は後遺症なしの社会復帰

 外傷センターで診療に当たる医師は、医療関係者の間では通称“外傷整形外科医”と呼ばれる。

「開放骨折などで皮膚に傷口があると感染の恐れがあるので、まず骨折部分をはさんだ両側の骨にピンやワイヤを打ち込み、骨折を外側から固定する『創外固定』を必要とすることが多い。そして、全身状態や皮膚や軟部組織の状態がよくなったらプレートや髄内釘で固定する『内固定手術』を行います。創外固定を素早く正確にやらないと、内固定がうまくいきません。外傷整形外科医は、できる限り後遺症を出さずに社会復帰できるようなストーリーを描いて治療をしているのです」

 同センターは多くの臓器が隣接し、硬い靱帯で囲まれている骨盤の骨折や、手術が難しく後遺症を残しやすい複雑な関節内骨折の治療を得意とする。特に骨盤骨折の治療は、大学の整形外科教室でもほとんど学ぶ機会がなく、敬遠する医療機関は少なくないという。

「急性期だけでなく、慢性期では骨折治療後に起こる『偽関節』や『変形癒合』などの治療も積極的に対応しています」

 偽関節とは骨がうまく付いていない状態をいい、人工透析や糖尿病の人に起こりやすい。変形癒合は、骨が変形して治っている状態で、脚の長さが違うような場合には創外固定で脚を延長させるという。

 これらの治療と並行して重要になるのがリハビリだ。毎朝行うリハビリ科とのカンファレンスで情報を共有し、外傷整形外科医が主治医として最後まで治療を受け持っている。

「私たちの診療で“ケガをしたから治療後も元のように動けないのは仕方がない”は通用しません。治療のゴールは、運動機能を元に近い状態に戻すことです」

■データ
徳洲会が2005年に東京都で初めて開設した総合病院。
◆スタッフ数=外傷整形外科医5人
◆月間初診患者数=平均80人。年間だと1000人
◆患者の外傷の内訳=四肢と骨盤の骨折が9割、その他は腱、靱帯、神経など