有名病院 この診療科のイチ押し治療

【歯・顔面痛】東京歯科大学千葉病院 慢性の痛み・しびれ外来(千葉市)

(C)日刊ゲンダイ
痛み・しびれは歯の治療だけでは消えない

 歯科病院の歯科麻酔科は口腔外科手術の全身麻酔など、手術室での全身管理や疼痛管理を行う診療科。外来では歯科恐怖症、有病者、障がい者ら、歯科治療を受けることが困難とされる患者に対して静脈内鎮静法を行う。

 その一方で、歯の「ペインクリニック科」として口腔顔面領域の痛み、しびれの治療を専門とする。

 同院では地域の歯科クリニックとの連携を強化するため、分かりやすく「慢性の痛み・しびれ外来」と標榜している。一般的には「歯の痛みは歯を治療すれば治る」と思われがちだが、同外来の佐塚祥一郎医局長はこう言う。

「歯の微小の破折、噛み合わせ異常、歯根の小さい嚢胞や腫瘍などは、通常のレントゲンだけではなくCTを使用しないと分からないものもあります。また、画像で原因がわからない場合もある。一般の歯科クリニックでは、原因不明の痛みやしびれと診断されることも多いのです」

 残念ながら、歯科医師の間でもペインクリニックの認知度はまだ十分ではないという。その結果、「問題なし」とされながらも痛みやしびれに苦しむ患者は、ドクターショッピングを繰り返す。中には「気のせい」と言われたり、精神科の受診をすすめられるケースもあるという。

■「歯ぎしり」「食いしばり」も原因

「たとえば患者さんが右下の歯が痛いと訴えても、右上の歯に原因があり、そこに麻酔を打つことで痛みが取れることがあります。これは疼痛錯誤といわれ、上顎と下顎の痛みを脳に伝える神経(三叉神経)は1本に合流しているので、上下の痛みが錯覚して感じてしまうことがあるのです」

 歯ぎしりや食いしばりのクセで、顎や首の筋肉の疲労によっても歯に痛みが表れる。こうした筋・筋膜性歯痛は、筋肉のコリの部分に麻酔を打つ「トリガーポイントブロック」やクセの改善指導、マウスピースなどで治療する。

 これらの痛み症状は、比較的早く治りやすいが、最も治療が難しいのはしびれや違和感といった感覚的な症状だ。

「増えているのは、親知らずの抜歯やインプラントの治療で下歯槽神経を傷つけてしまい、下唇や下顎にしびれが表れる症状です。100%の完治は難しいのですが、時間をかけて生活に支障のないレベルに戻すことが目標になります」

 早い段階から、首の部分にある交感神経節に麻酔薬を注入する「星状神経節ブロック」が有効だ。週1~2回行うことで、早い人で数カ月、長い人でも1年くらいでよくなるという。

 同外来では、歯科領域以外の原因で起こる三叉神経痛、末梢性の顔面神経まひ、帯状疱疹による顔面神経痛、心因性の舌痛症などの治療にも対応している。

 県内に同大付属の市川総合病院があるので、原因や病態によっては脳神経外科、神経内科、耳鼻咽喉科などの医科との連携がスムーズにできるのが強みだ。

「原因不明と診断されると、その不安から症状を悪化させてしまうことがあります。口腔や顔面の慢性的な痛みやしびれがあれば、気兼ねなく受診してください」

 治療で保険適用外の漢方薬や外用薬を使う場合は、治療費が自費になるケースもあるという。

 日本最古の歯科大学(1946年設置)の付属3病院のひとつ。
◆スタッフ数=歯科麻酔専門医4人、認定医2人
◆年間初診患者数=約150人
◆年間治療症例数=延べ約2400例