当事者たちが明かす「医療のウラ側」

地方から若手医師が消える 新専門医制度は地域医療をつぶすか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
都内の40代勤務医

「本当に実力があるの?」「別にそんな肩書なんてなくても実力のある名医はいっぱいいるから関係ないよ」

 いまの専門医に対してこんな印象をお持ちの方も多いと思います。確かにいまの専門医は「日本○○学会」という、医師の任意団体が独自のプログラムで認定したもの。同じ専門医資格をうたっていても、厳しい研修・審査によって発行されるものと、事実上、講習会に出るだけでOKの“緩い”専門医資格が存在します。ですから、この資格を持っている人がその病気の診断・治療に造詣が深いとは必ずしも言えません。

 事実、医師の中には「俺より下手な医師が“指導医”だなんて威張っているが、実績・経験ともに俺の方が上。わざわざ専門医資格なんて取らなくたっていい」と考えるベテラン医師は少なくありません。「時間とお金をかけて専門医資格を取っても、患者さんはその意味を知らないし、公的な資格じゃないからメリットも少ない」という若手医師もいるのです。

 そこで、国は来年4月から新たな専門医制度をつくることになりました。これまでと違って、中立的第三者機関が専門医の認定を行うのです。

「その趣旨やよし」ですが、いま、そのことが大きな問題になっているのです。厚労省の部会で「実施延期」を求める意見が相次ぎ、一般社団法人全国公私病院連盟も正式に「研修開始の延期」を要請しています。

 その最大の理由は、指導医など脂の乗り切っているベテラン医師の仕事量が増えることに加え、地方の中小病院が医師不足になるからです。

 新専門医制度の研修の多くは都会の大病院で行うことになります。その間、地方の中小病院は専門医取得年齢の若手医師が不在になる。しかも、医師国家試験を合格した若手医師は、内科専門研修が行われた後に専門医資格を取ろうとすると、さらに長期間、都会の病院にとどまることになります。その揚げ句、「自分のキャリアのためには地方には行きたくない」と言いだしかねないのです。これは地域医療を崩壊させることにつながります。

 すでに医師の高齢化が問題になっている地方では、将来まともな医療を受けられなくなるかもしれません。新専門医制度は医師だけの問題でなく患者さんにもかかわりがあることを知っておいてください。