役に立つオモシロ医学論文

日光を積極的に浴びた方が長生きする

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「日光浴」は、何となく健康的なイメージがあります。しかし、太陽光の浴び過ぎは、紫外線の影響により皮膚トラブルを起こしやすくなります。皮膚がんの発症リスクも高くなるというマイナスの面もあるのです。その一方で、積極的に「日光浴」を行うことが寿命を延ばすのではないかとの研究報告もあり、その健康への影響が注目されていました。

 スウェーデンの内科専門誌電子版に2016年3月16日付で、「日光浴と死亡リスクを検討した観察研究」の論文が掲載されました。2万9518人のスウェーデン女性(開始時年齢25~64歳)を20年間追跡した研究です。対象者は、太陽光を避けるグループ(1721人)、適度に太陽光を浴びるグループ(1万6166人)、太陽光を積極的に浴びるグループ(1万1631人)の3グループに分けて比較しています。なお、結果に影響を与え得るような「年齢」「喫煙状況」「配偶者の有無」「併存疾患」などで調整し、解析しています。

 その結果、太陽光を避けるグループと比較して、適度に太陽光を浴びるグループは20%、太陽光を積極的に浴びるグループでは30%、統計的にも有意に死亡リスクが低下しました。太陽光を避けるグループは、積極的に浴びるグループに比べて寿命が0・6~2・1年短いと見積もられています。

 この研究は、あくまで太陽光を浴びる頻度と死亡の関連について検討したもので、因果関係を決定づけるものではありません。しかしながら、太陽光を浴びることは、正常な生命活動に必要なビタミンDの産生を促します。特に紫外線が強い時季は注意が必要ですが、太陽光を避けることもまた、体に悪影響を及ぼすでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。