医者も知らない医学の新常識

「AB型」被災者はエコノミークラス症候群に気をつけろ

熊本地震で避難生活をする益城町の人々
熊本地震で避難生活をする益城町の人々(C)日刊ゲンダイ

 熊本地震によるエコノミークラス症候群(急性肺血栓塞栓症)が話題ですが、被災地におられる血液型「AB型」の人は、より気をつけた方がよいかもしれません。

「ABO型」の血液型というと、「A型はきちょうめん」のような性格診断がすぐに頭に浮かびます。しかし、これはほぼ日本だけの現象で、あまり科学的な裏付けのあるものではありません。ただ、この血液型は輸血などの場合には非常に重要で、一致しないと拒絶反応の原因になります。それ以外に、この血液型は病気のなりやすさにも関係しています。

 たとえば、被災地での感染拡大が懸念されているノロウイルスによる腸炎は、小腸にある血液型の抗原にくっついて感染を起こすので、血液型によって感染しやすさが変わります。

 米国で最初に流行したノロウイルスは、「O型」と「A型」には感染しやすく、「B型」や「AB型」には感染しませんでした。

 これについて最近多くの報告があるのは、血の塊が詰まる病気である血栓症です。今年の「サーキュレーション」という専門誌に発表された論文によると、「O型」と比較してそれ以外の血液型では、「深部静脈血栓症」や「肺塞栓症」といった静脈血栓症が、最大で2倍くらい多いという結果になっていました。特に「AB型」が最もそうした病気にかかりやすかったのです。その原因は、血液の中にある血液を固める時に必要な物質が、「O型」以外では多いためと考えられています。

 血液型は変えられませんから、心配しても仕方ありませんが、「AB型」の人は血液がドロドロにならないように、より気を配った方が安心かもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。