現存する中国最古の医学書と呼ばれる「皇帝内経素問」には、「女性は7の倍数ごとに節目があり、心と身体に変化が訪れる」と書かれています。
7歳、14歳、21歳……と7の倍数の年齢ごとにどういった変化があるかも記されていて、たとえば、35歳は「面始めて焦れ、髪始めて白し」と、容貌などに老化が表れ始める年代であるといいます。
また、49歳は「天癸渇き、形壊えて子無き」とされています。現代に置き換えるなら、49歳では更年期障害などの不定愁訴が起こりやすくなるという考えです。ちなみに、「皇帝内経素問」が書かれた時代には更年期障害という概念はありません。
更年期障害の不定愁訴は、「気」や「血」の滞りや不足が原因で起こるといわれています。気の流れが滞れば、動悸(どうき)などが起こりやすくなる。血が不足すれば、めまいや不眠が生じる。症状と体質に応じて、その方に適した漢方薬を処方します。手足が冷えて、月経不順や便秘があるなら桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、のぼせ、頭痛、肩凝り、イライラや落ち込みなどがあれば加味逍遥散(かみしょうようさん)というようにです。
「更年期障害で漢方薬を勧められたが、効き目がいまいちだった」という話も耳にします。それはもしかしたら、「更年期障害だったら○○○」といったステレオタイプな処方のせいかもしれません。
漢方薬を専門にする薬剤師は、不調の内容だけから漢方薬を決めるのではなく、さまざまな情報から総合的に判断して処方します。だから、2人から同じ症状を訴えられても、2人が同じ漢方薬になるとは限りません。
奥さんが更年期障害でつらい状況にいるようなら、漢方薬を勧めるのもひとつの手です。
漢方達人をめざせ!