有名病院 この診療科のイチ押し治療

【原発性アルドステロン症】みさと健和病院/糖尿病・内分泌内科(埼玉県三郷市)

(C)日刊ゲンダイ
薬を飲んでも血圧が下がらなければ疑え

 高血圧症の患者数は国内の慢性疾患で最も多く、推定約4000万人。その多く(約90%)は体質や生活習慣が原因の「本態性高血圧」だが、腎臓病や内分泌異常など特定の原因で起こる「二次性高血圧」もある。その中で注目されているのが「原発性アルドステロン症(PA)」だ。

 最近の調査では、高血圧症全体の3~10%を占め、降圧剤(3種類以上)を服用しても血圧の下がりが悪い、治療抵抗性高血圧の25%が該当する可能性があるとされている。同科は、民間病院の中ではPAの診療実績が豊富で、正確な診断と適切な治療ができる施設のひとつ。宮崎康科長が言う。

「PAはかつて、高血圧で低カリウム血症のある若い世代の病気とされて、発症はごく少数とみられていました。しかし、検査法の進歩などで高頻度の病気であることが分かってきたのです。当科では、低カリウム血症のない高血圧の患者さんでも、4~5%にPAが見つかっています」

 PAは、左右の腎臓の上に小さなギョーザほどの大きさでのっている「副腎」のホルモンの分泌異常で起こる。原因は、副腎の片側にできた良性腫瘍や、両側の細胞の数が増える過形成。塩分吸収やカリウム排出、水分、血液量、血圧のバランスを保つ働きをするアルドステロンというホルモンが過剰につくられることで、高血圧や低カリウム血症を起こす。

「怖いのは放置すると臓器障害の原因になることです。PAのある人はない人に比べて、脳卒中が約4倍、心筋梗塞が6.5倍、心房細動が約12倍、心肥大は1.6~2.9倍と発症リスクが高い。慢性腎臓病になる人も多く、肥満や耐糖能障害、睡眠時無呼吸症候群などの合併頻度が高いことも報告されています」

■病型診断できる

 PAの疑いをあぶり出すスクリーニング検査は、外来の血液検査で簡単にできる。しかし、問題は精密検査。負荷試験(血液検査)と副腎CT検査までは多くの施設で実施できるが、片側性か両側性かの病型診断に欠かせない「副腎静脈サンプリング」という検査が非常に難しい。どこの施設でもできるわけではないという。

「この検査は足の付け根からカテーテルを挿入して、左右の副腎静脈から直接採血してアルドステロンの過剰を確認します。ただし、右副腎からの採血が非常に難しく、行う医師には高度な技術が必要です。それがPA診療の大きなネックになっているのです」

 副腎静脈サンプリングは通常約3時間かかるが、熟練の外科医が行う同院では1時間前後。昨年、負荷試験でPAが確定した25例中、24例で成功。両側性15例、片側性9例が確認されている。

 治療は片側性では腹腔鏡手術で片側全摘、両側性では薬物療法になる。

「片側性で全摘すれば高血圧が完治する場合もあり、高血圧が残っても薬の量が減らせます。両側性でもアルドステロン拮抗薬を含む降圧剤の服用で臓器障害が防げるので、治療効果は大きい」

 薬でコントロール不能の高血圧はPAを疑い、精密検査のできる医療機関を受診した方がいい。

データ
 東京と埼玉に3カ所の病院と8カ所の診療所などの施設を持つ医療法人財団健和会の一病院。
◆同科スタッフ数=医師7人
◆初診患者数(2015年)=282人、うち原発性アルドステロン症新規患者数=60人