皆さんは「テロメア」という言葉を聞いたことがありますか? 遺伝子のDNAの端にある、キャップのような構造のことです。細胞が分裂する時には、DNAが2つに分かれてそれから複製されるのですが、このテロメアの部分は完全には複製されずに短縮します。細胞が分裂するごとに、テロメアは短くなるので、「テロメアの長さは老化の指標」のようにいわれることもあります(編集部注=命の回数券という人もいます)。
テロメアが完全になくなると、細胞はもう分裂することができずに、死んでしまいます。そんな話を聞くと、非常に恐ろしく感じますが、実際には、平均的には90歳でも十分な長さのテロメアは残っているのです。
ただし、遺伝子の異常により、異常に早くテロメアが短縮する病気があることが知られています。「再生不良性貧血」という血液を作る力が弱くなる病気は、その代表的なもののひとつです。
これまで、こうした病気を治す方法はないと考えられていましたが、今年の5月にびっくりするような研究結果が報告されました。
「蛋白同化ステロイド」という、筋肉の作用を強くする、スポーツ選手のドーピングに使われるステロイドホルモンの一種を使用したところ、テロメアの短縮が抑えられたばかりか、延長することが証明されたのです。
そのメカニズムは不明ですが、人間の老化の予防も夢物語ではなくなるかもしれません。
医者も知らない医学の新常識