専門家が推奨 認知症は1日10分の「昭和歌謡」で予防する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 いったん認知症になってしまえば“完治”するのは難しい。だから、未然に防ぐこと、症状を和らげることを考えたい。和合教授は、25年にわたり、予防法としての“音楽療法”を研究、提唱してきた。

「認知症リスクを減らすには、生活習慣の改善、ストレスを減らすなど方法はありますが、定期的な運動や食事制限など、続かないサラリーマンは多いでしょう。音楽療法なら、脳に効く音楽を1日10分聴くだけでいい」

 通勤時にスマホで聴けるのだからラクチンだ。

 日本の認知症患者は予備群を含め800万人を超える。さらに9年後には、団塊世代が後期高齢者になるため、認知症による要介護者が増えるとされている。

 しかし、高齢者だけの問題ではなく、誰でも35歳を過ぎると認知症のリスクが出てくるという。早ければ働き盛りの40代、50代で発症するから、他人事ではない。「認知症にならないためのCDブック」の著者で、埼玉医科大学の和合治久教授が言う。

「人間は35歳を過ぎると、自律神経のうちの交感神経が優位になります。自律神経とは、胃や腸、血管などの器官や組織をコントロールする役割を持ち、交感神経と副交感神経から成り立ちます。両者がバランスよく働けばいいのですが、交感神経が優位になると、アドレナリンが過剰分泌されます。すると血管が収縮し、血流が悪くなるので、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血の危険性が高まるほか、アルツハイマー型認知症の発症リスクにつながります。日本人のかかる認知症のうち、68%がアルツハイマー型なのです」

 科学的根拠も出ている。古くは50年代、フランスの耳鼻咽喉科医のアルフレッド・A・トマティス博士の研究だ。

「最も効果的なのは、モーツァルトの曲。彼の曲の周波数は、脳の働きを活性化し、ストレスを軽減、感受性を豊かにすると解明しています。例えば、『バイオリン協奏曲K207第1楽章』『ディヴェルティメント ニ長調K136 第2楽章』などはいいですね。4000ヘルツ前後の高周波音が、脳に強い刺激を与え、免疫系、脳神経系などの生体機能に良い影響を与えています。高周波数とはいえ、ピアノや弦楽器のゆらぎの音楽はいいのですが、ダンスミュージックなどの激しい音楽は筋肉活動を活発化し、交感神経を優位にするからダメ。クラシックや自然の音が好ましい。寝ているときに流すだけでも効果はあります。人間は聴覚が優れていますから、体は寝ていても脳には効果をもたらしています」

 物忘れが多くなった老親には、口ずさめる曲を薦めたい。

「文部省唱歌や昭和の歌謡曲、叙情歌は高周波数の曲もあり優れています。また、歌を口ずさむことで、その当時の記憶が蘇る。これが認知症の改善、予防につながります。声を出すことで、年老いると出にくくなる唾液の分泌も促すため、誤嚥性肺炎のリスクも減らせます」

 和合教授はあらゆる音楽を分析している。その結果、例えば、「夏は来ぬ」「茶摘み」「浜辺の歌」「故郷(ふるさと)」などは高周波音を出し、効果が期待できる。

 今月は父の日もある。親にはCDを贈ってみるか。

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