当事者たちが明かす「医療のウラ側」

欧米が検証 コレステロール値検査に“絶食不要”の時代到来

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
40代内科勤務医

 病気になりたくなければ、健康診断は欠かせません。しかし、いくら口を酸っぱく言っても、「忙しい」の一点張りで健康診断から逃げ回っている人が結構います。

 しかし、じっくり話を聞いてみると、健康診断拒否の理由は「多忙」だけではなさそうです。むしろ、人付き合いが必要な働き盛りの人は、「前日の21時までに食事を済ませてください」「お茶や水以外は飲まないでください」などと言われても、実行できないケースが多いのです。

 気持ちは分かりますが、検査前の食事や飲み物は血糖値やコレステロール値を変えてしまいます。私は“そこはご理解いただかないと”と思うのですが、そろそろ認識を変える必要がありそうです。少なくともコレステロール値の検査には、“絶食不要”の時代が間もなくやってくるからです。

 先日、欧州動脈硬化学会らが声明を発表しました。「コレステロール値を調べる血液検査は空腹時でなくてもよい」というのです。

 もともと、デンマークなどは空腹時以外の検査値を使っています。それで何ら問題ないということでした。そこで、米国、デンマーク、カナダの30万人超を対象とした検証を行った結果、今回の声明になったというわけです。

 実際、空腹時のコレステロール値と非空腹時のコレステロール値を比較したところ、食後1~6時間最高変化の平均値は、トリグリセライド、総コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、リポ蛋白などで非空腹時の値がやや高くなったものの、HDL(善玉)コレステロールやアポリポ蛋白などでは変化がなかったそうです。

 ならば、検査前の食事をOKにして健康診断の受診者を増やした方が、病気を発見する可能性が高くなると考えられます。最初の健康診断で「要検査」となれば、その時初めて空腹時に注目すればよいのです。

 ただし、血糖値は食事前と後ではまったく違います。現実にはこちらの検査が「絶食不要」と判断されるまでは、「前日の21時までに食事を済ませてください」との指示からは逃れられそうにありません。