「睡眠時間は十分で、しかもぐっすり眠ったはずなのに、寝起きが悪い。日中も眠い」といった経験、だれにでもあるのではないでしょうか?
西洋医学的に見ると、自律神経のうち交感神経は活動時に優位に立ち、副交感神経は睡眠時に優位に立ちます。
通常、目が覚めると、副交感神経から交感神経にスムーズに切り替わります。ところが、東洋医学的にいう「脾の運化(うんか)作用(消化した栄養を気血に変えて全身へ運搬する一連の働き)の低下や気が停滞した状態」の場合、その切り替えがうまくいかず、目が覚めても副交感神経が優位な状態を求めてしまう。
つまり、睡眠を求めてしまうのです。だから十分に寝たはずなのに眠いのです。
この状態を改善するには、脾臓や気を活発化させなければなりません。「すっぱい」「苦い」「甘い」「辛い」「しょっぱい」といった五味のうち、「甘い」に属する食品を取ると良いです。甘いといっても果糖や砂糖などではなく、芋、トウモロコシ、バナナ、キャベツ、シイタケなどになります。
漢方薬では、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や六君子湯(りっくんしとう)が効果を発揮します。いずれも朝鮮人参が生薬として含まれていて、特に停滞した気を持ち上げるのに有効です。
通常、体の疲れは、質の良い睡眠によって解消されます。しかし、胃腸が弱り、気が停滞していると、睡眠だけでは「元気」を取り戻せません。では、なぜ胃腸が弱り、気が停滞するのか?
その背景には、考えても仕方がないことにいつまでもとらわれていたり、気持ちのオンとオフの切り替えがうまくできなかったり……ということがあります。放置すると、体のさまざまなところに不調が出るかもしれません。「寝ているのに眠い」は、その最初のサインだと考えてください。
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