独白 愉快な“病人”たち

川村ひかるさん 2つの病気をきっかけに「ABC論」を実践

病気を通して「人生観が変わった」と語る
病気を通して「人生観が変わった」と語る(C)日刊ゲンダイ

 めまい、動悸、のぼせ、突然汗が出るなど、体調に急な変化が起きたのは31歳の時です。24歳で子宮内膜症も経験しているのですが、今まで体験したことのない症状でした。髪は抜け、ドライマウスで、肌はカサカサ。夜は不安で眠れず、日中はボーッとして眠い。

 記憶力までおかしくなり、楽しみにしていた友人とのハワイ旅行すら忘れてしまったこともありました。前日、友達と電話で話したにもかかわらず、予定を忘れて家で寝ていたんです。もう、自己嫌悪に陥りました。

■「若年性更年期障害」が発覚

 いつもは気合で乗り切っていたのに、今回は気合の魔法がきかない。それまでは何があっても休まず仕事を続けてきただけに、自分をコントロールできないことにイライラが募り、次第に感情の起伏も激しくなりました。我慢すると怒りで「頭に血が上る」ということを自覚するほどでした。

 中医学の医師をしている友人に話したら、「舌の写真を送って」と言われました。そこで携帯で画像を送ると、「若年性更年期障害だよ」と診断されました。

 婦人科に行くと、中医学の舌診を裏付ける検査結果が出ました。「子宮を摘出されましたか?」と問われるほど、ホルモン値が極端に低かったんです。

 病名が分かってからは、まず病気を認め、「どうやったら治せるか」に考えをシフトしました。

 最近は男性更年期も多いそうですが、男性も大変でしょうね。気合で乗り切れないだけで自信を失ったり、病気を認めることで社会に置いていかれるような感覚に陥る可能性もありますし……。私がいたグラビア業界も見た目と違って男前な世界で、「自分の代わりはいない」って思って走ってきましたから。男性と同じ感覚ですね。

■「ABC」論を実践

 一番の原因は、経営していた会社の新規事業のストレスでした。なかなか思うように進まなかったんです。結局、新規事業はいったん諦め、タレント業に専念することにしました。

 そして、自分に合う治療法探しに注力しました。相性が良かったのは、漢方の煎じ薬とはり治療とヨガ。よく眠るために、家の中を暗くして目に刺激を与えないようにしながら、靴下と腹巻きで体を温めました。頭に血が上ったら、すぐ冷やす。出先でも冷却ジェルシートを持ち歩き、すぐ応急処置。こうして日々の対処法も身につき、次第に症状が緩和しました。

 ところが一昨年の秋、突然ハンマーで殴られたような痛みに襲われたんです。MRIを撮ったら、脳動脈瘤が見つかりました。まだ2ミリ程度で大きくないから経過観察でいいということで、半年に1回、MRIでチェックしています。

 グラビアアイドル時代は、水着が制服でした。真冬でも一年中水着で常に体を冷やし、忙しかったので病院にも行かず、更年期障害を引き起こすような体に悪いことを積み上げてきた自覚はありました。でも、今回は不意打ち。初めて「死」というものを考えさせられました。

 脳動脈瘤の一件からは、考え方がシンプルに変わっていきました。不要なものを手放し、本当に必要なものだけを身の回りに置くようになったんです。

 最近は健康のためにサプリや体にいい物を“取り入れる”ことばかりが注目されていますが、“出す(デトックス)”ことこそ大切だと気づいたのです。そんなふうに人生観が変わり始めたころ、主人とも出会いました。

 今はデトックスのために家でぬか漬けを作っています。乳酸菌はお腹の中のものを“出す”のに非常にいいんですよ。病気をきっかけに、私は「ABC論」を心掛けているんです。「A」は「当たり前のことを」、「B」は「バカにせず」、「C」は「ちゃんとやる」、です。

▽かわむら・ひかる 1979年、東京都生まれ。16歳のときにグラビアデビュー。健康管理士、JAA アロマコーディネーター、ジュニア野菜ソムリエの資格を取得。2013年に「全漬連公認漬物PR大使」に就任。今年4月に一般男性と入籍。近著に「発酵美人」(幻冬舎)がある。