専門医が病気になったら飲む薬

【高血圧】上が140超えたら「カルシウム拮抗薬」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「背中をバリバリッと割られるような激痛に襲われ、あっ、死ぬんだ」

 先月29日、トーク番組で急性大動脈解離を発症したときのつらさを語ったのが、落語家の笑福亭笑瓶(59)。胸の太い動脈が裂ける致死的な病気の大きな要因が、4000万人の患者がいる高血圧である。

 140/90mmHg以上は要治療だが、放置する人も少なくない。最新降圧剤を巡る不正なデータ操作問題も重なり、薬に対して不安を覚える人もいる。高血圧患者を診察する専門医は自分が高血圧になったら、どの薬を飲むか。東京医大循環器内科兼任教授・桑島巌氏が言う。

「私なら、上の血圧が140以上になったら速やかにカルシウム拮抗薬を飲んで、120~130になるまで徹底的に血圧を下げます。判断基準は上だけです。ほかの薬は使いません」

 血圧を下げる場合、ARB、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬の5つのグループが主要降圧薬で、β遮断薬を除く4つが治療の最初に選ぶべき第1選択薬になっている。

 売上高で見ると、最新のARBが人気で、上位30薬品のうち5つのARBがランクイン。カルシウム拮抗薬は圏外だ。なぜ売れていない薬をチョイスするのか。

「カルシウム拮抗薬の方が、ARBより目標の血圧に達する割合が高いのです。60歳以上だと、カルシウム拮抗薬は7割が目標を達成しますが、ARBは3割。この点から、明らかにカルシウム拮抗薬です」

 ARBは新しい薬だけに薬価が高く、1年間の薬代は3割負担で1万5000円前後になるケースもあるが、カルシウム拮抗薬ならその3割程度の5000円ほどで済むから家計にも優しい。

「米国の研究で、上の血圧を120未満に下げるグループと140未満に下げるグループに分けて比較した結果、血圧をより下げた方が心筋梗塞や脳卒中の発生率が37%少なかった。つまり、血圧は低ければ低いほどいいということがハッキリしています。その点から、新薬より血圧を下げる効果に優れるカルシウム拮抗薬を選ぶ方が理にかなっているのです」

 必ずしも新薬がいいということではない。新薬に頼っている人は、一考の余地があるだろう。