身近な薬の落とし穴

風邪薬には“不必要”な成分も含まれている

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 風邪をひいたらすぐに風邪薬を飲む方がたくさんいらっしゃいます。いわゆる風邪のひきかけでも、「予防のために風邪薬を飲む」なんて方もたまにお見かけします。でも、ちょっと待ってください。風邪薬で、風邪を治すことはできません。

 市販されている風邪薬は、さまざまな種類があります。その多くは、発熱・喉の痛み・頭痛・鼻水のどれにでも効果がある総合風邪薬です。症状を緩和する効果があるのは事実ですが、風邪そのものの治りを早めているわけではないのです。

 たくさんの効果があることは、一見良さそうに思えます。しかし、実はそうでもありません。「鼻水・鼻づまりに」とうたうベンザブロックSプラスには、ジヒドロコデインリン酸塩という「せき止め」の成分も入っています。この成分には、眠気、めまい、吐き気、便秘などの副作用が報告されています。鼻水がひどくて薬を飲んだのに、必要のない成分の副作用が起こってしまっては、本末転倒です。

 また、ご存じの方も多いでしょうが、風邪薬で風邪の予防はできません。先日、「喉が痛くて、風邪薬を飲んだら悪化しなかった」と言われる患者さんがいらっしゃいました。しかし、この方の「のどの痛み」は非常に軽かったようで、おそらく薬を飲まなくても悪化しなかったと思われます。風邪を治すのは、あくまで自身の“身体の力”です。軽い風邪の場合、まずはしっかり水分を取り、睡眠などの休養をとることが一番の薬です。

 もちろん、どうしても鼻水を止めなければ仕事に影響が出るなど、薬が必要なケースもあると思います。しかし、“不必要”な薬を飲んで別の症状に悩まされたり、治りを遅らせてしまっては、もっと厄介です。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。