これで痛みを取り除く

「五十肩・膝痛」 不要な新生血管をカテーテルで消す

膝痛がつらいなら…
膝痛がつらいなら…(C)日刊ゲンダイ

 五十肩や膝痛などの関節の慢性的な痛み。これまで整形外科の治療では、検査画像から診断し、骨や関節組織の構造的な破綻を治す(形を治す)ことを主な目的としてきた。そのため、患者の痛みの除去はあまり重視されず、鎮痛薬や湿布などを使って患部の炎症が治まるのを待つ対症療法が行われているのが一般的だ。

 しかし、骨や関節の「形」に大きな異常は見られなくても、長引く痛みに悩まされている人は少なくない。そんな慢性的な痛みを取り除く「運動器カテーテル治療」という新しい治療法がある。開発者の江戸川病院・運動器カテーテルセンター(東京・小岩)の奥野祐次センター長はこう言う。

「この治療法は、血管の中にカテーテル(柔らかい細径チューブ)を挿入して、痛みのある場所まで移動させ、少量の薬剤を注入するだけです。体の負担がきわめて軽いので、歯科治療くらいの感覚で受けられます」

 治療前に外来で造影剤を使ったMRI検査をする必要があるが、治療自体は局所麻酔で40分くらいで済むので日帰りが可能。カテーテル治療といえば、脳動脈瘤や心臓病などの治療でよく使われている。しかし、なぜカテーテル治療で痛みが取れるのか。新しいのは“痛みと血管の関係”に着目している点だ。

「いつまでも治らない痛みの原因は長引く炎症です。炎症が長引いている場所には細かい血管が異常に増えていて、その血管と対になって神経も増えています。正常な毛細血管は血液がゆっくり流れていますが、痛い場所にできた新生血管は血液の流れが非常に速く、それが周囲の神経を刺激して痛みとして感じるのです」

 通常の炎症はすぐに治まり、痛みもなくなる。しかし、長引く炎症では新生血管が残ってしまい、神経も残るので慢性的な痛みが続いてしまうという。運動器カテーテル治療は、「チエナム」という抗生物質の一種を直接投与し、不要な新生血管の流れを一時的に詰まらせることで、痛みを感じている神経もろとも消失させるのだ。

 2007年から奥野センター長が実施してきた患者数は約800人。早い時点で治療をした方が効果は高く、重症でなければ8~9割の人は1回の治療で満足する程度まで痛みが改善するという。

「長引く痛みの場合は、ヒアルロン酸やブロック注射が効かないこともあります。それらを延々と繰り返すよりも、一度カテーテル治療を検討してみてください」

 運動器カテーテル治療は保険適用外で、費用は同院の場合で1回約12万円から20万円。少しずつではあるが、全国の医療機関に普及しつつあるという。