ダイエットを科学する

食べていないのに…“太りやすい人”が持つ3つの肥満遺伝子

自分に合ったダイエット法で無理なく痩せたい
自分に合ったダイエット法で無理なく痩せたい(C)日刊ゲンダイ

 ダイエットに成功できない人は、「食べずに運動すればいい」などと単純に考えがちだ。しかし、それは大きな間違い。体重増は、睡眠や咀嚼力、生活リズムなどさまざまな要素から起きている。本連載は肥満やダイエットの仕組みを学び、効率的なダイエットの参考にしてもらおうというもの。1回目は「肥満遺伝子」だ。

「同じ量しか食べていないのに自分だけが太っている」と感じている人は多い。本当か。日本肥満学会評議員であり、東京慈恵会医科大学大学院の和田高士教授(健康科学)が言う。

「本人が意識せずに食べているとか、活動量が少ない、などの原因も考えられますが、肥満になりやすい人には3つの特徴があります。①肥満遺伝子を持つ人の肥満傾向が強い②食べたものを小腸で吸収する力が高い③基礎代謝(生命維持エネルギー)が成人男性1500キロカロリー、女性1200キロカロリーより低い――ことです」

 肥満遺伝子は、エネルギー代謝に関連する遺伝子のこと。飢餓期を生き延びた人類の知恵で、食べられるときは余剰なエネルギーを脂肪として体内にため込み、食べられない時期はそこから少しずつ脂肪を燃焼させてエネルギーに変換させる。

 こうした肥満遺伝子は現在約60種類近くが確認されており、日本人が持つ肥満遺伝子は3つに分類される。

 ひとつが「β3アドレナリン受容体遺伝子」だ。

 日本人の30%強が保有し、基礎代謝が普通の人より200キロカロリー前後低い。基礎代謝とは、私たちのカラダを動かす基本的なエネルギー。保有しているのは男性に多く、血糖が上がりやすいご飯やパンなどの糖質を好む。それでいて糖代謝が苦手。そのため、お腹周辺が太りやすく、内臓脂肪も蓄積しやすい。

「このタイプは放置しておくと糖尿病、高脂血症、脂肪肝になりやすい。低糖質ダイエットが有効で、有酸素運動や腹筋などの運動が適しています」(和田教授)

 2つ目が下半身が太りやすい「アンカップリングプロテイン遺伝子」(UCP-1)。日本人の4分の1に見られる。基礎代謝が一般より100キロカロリー低く、脂肪代謝が苦手。下半身に皮下脂肪が蓄積されやすい。

「この遺伝子を持つ人は、肉や揚げ物など脂肪分の多いものを好む。そのため低脂質ダイエットが効果的。特に筋力トレーニングやストレッチなどの運動が効果的です。がんにもなりやすい」

 3番目は「β2アドレナリン受容体遺伝子」。日本人の約20%弱がこのタイプだ。

「このタイプは逆に基礎代謝が200キロカロリー高い。ほっそりしていて太りにくいが、筋肉もつきにくいため、一度太りだすととめどなく太ってしまう」

 こうした人は高タンパク質ダイエットが効率的で、負荷をかける重量挙げなどの筋トレが最適だ。

 肥満は遺伝子が3割前後も影響する。遺伝子をチェックし、それに見合ったダイエットをすれば効率的にやせられるはずだ。