病院は本日も大騒ぎ

杖を拾えず倒れたら起き上がれない患者たち

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 通算看護師歴20年を超えたミエコです。

 現在、どこの病院でもそうだと思いますが、高齢の入院患者が増え、新たな問題に頭を抱えています。物忘れがひどい人、あるいは認知症の患者さんの対応です。

 患者さんが入院される前、私たち看護師は病院の廊下の歩き方や売店での買い物、トイレの使用などについて詳しく説明します。ところが、物忘れがひどい患者さんや認知症の患者さんはすぐに忘れてしまう。

「歩くときは杖を使用してくださいね! 部屋を出るとき引率しますから、声をかけてください!」と何度も指示しているのに、「自分で歩ける」と思い込んでいるのでしょう、一人歩きして、廊下や階段で転倒、転落を繰り返す患者さんも少なくないのです。

 杖を持って歩いている患者さんでも、転倒する人がいます。今度は一人で起き上がることができず、横になったまま、杖も拾えないケースも少なくありません。

 こうしたトラブルが起こった場合、上司に「ヒヤリハット」(事故を招く危険性)や「事故報告書」を提出しなければなりません。私たち看護師にとっては“余計な業務”になるのです。

 もうひとつ、高齢患者さんの物忘れで多いトラブルは「金品」の問題です。

 入院するとき、「現金を持ち込まない」という入院規則があります。それでもなぜか高齢者は、現金を手元に置きたがる方が多い。

 持っているだけならまだいいのですが、「現金がない! 盗まれた!」と騒ぎ出し、同室の入院患者や看護師に疑いの目を向けてくる場合もあります。

 後になって、本人の枕の下から現金が見つかっても、こういう患者さんは周囲の人に謝罪することはありません。今度は、その後始末のために私たち看護師がたしなめたり、頭を下げたりしなければならないのです。

 保険点数にならない業務にかかりっきりになることに嫌な顔をする医師や病院の事務方も、少なくないのが現実です。