ご飯を食べると眠くなるのはなぜでしょうか? これは完全には解明されていない問題です。
少し前までの説明は、「食事をすることにより胃腸に血液が集まるので、相対的に脳の血流が減って、脳の働きが低下するので眠くなる」というものです。ただ、脳の血流は低下しないように調節する仕組みがあります。それを超えて脳の働きが低下するようなことが、本当に食事のたびに起こるのだろうか……という点については確たる根拠があるわけではありません。
どちらかといえば、血圧の低下の影響の方が大きいかもしれません。食事は一種の運動ですから、直後に血圧は上昇し、それから下降します。それに伴って脳の血流低下が起こっても、これも不思議ではないのです。
最近、食後の眠気の原因として注目されているのは、「オレキシン」という物質です。オレキシンは脳の視床下部に存在する神経から分泌される物質で、この物質があることが目を覚ましているためには必要だと考えられています。
「ナルコレプシー」という居眠りをしやすい病気がありますが、この病気の人はオレキシンが欠乏していることが分かっています。オレキシンは食欲とも関連があり、食事前には増えて、食後に減少します。この食後の減少が、どうやら眠気の原因であるようなのです。
誰でも覚えのある食後の眠気ですが、原因は一筋縄ではいかないようです。
医者も知らない医学の新常識