いつ、どんな姿勢がいい? 正しい「家庭血圧」の測り方

朝は排尿後がベスト
朝は排尿後がベスト(C)日刊ゲンダイ

 高血圧は、痛みなどの自覚症状がほとんどないまま症状を悪化させる「サイレントキラー」。健康診断で高血圧を指摘されても知らん顔している人も多いが、放置すると脳や心臓、腎臓に障害を起こし、心臓病や脳卒中などを発症する恐れがある。それを防ぐため、日本高血圧学会は2年前の「高血圧治療ガイドライン」改定で「家庭血圧」の重要性を強調したが、いつ、どのような姿勢で、どんな家庭血圧計で測定すればいいのか。帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座講師で医師の浅山敬氏に改めて聞いた。

 血圧は朝と晩に測り、それぞれ2回の平均を記録するのが望ましいとされている。「深夜になっても血圧が下がらない人」や「朝の血圧が上昇している人」は、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高いことが明らかになっているからだ。しかし、忙しい中高年が1日4回、血圧測定するのは難しい。

「回数は気にせず、『お酒好き』『肥満の方』『喫煙者』『血圧の薬を飲んでいる人』など、循環器疾患リスクの高い人は、朝起きてトイレを済ませた後から朝食前の間に血圧を測り、記録することです。『女性』『糖尿病や脂質異常症、循環器疾患などの持病なし』『痩せ形』といったローリスクの人は、夜寝る前がオススメです」

 浅山氏らの最新研究によって、高血圧リスクの高い人は朝、低い人は夜に家庭血圧測定をした方が、将来の心臓や血管の病との関係が明らかになることが分かったのだ。

■血圧計で望ましいのは「上腕」タイプ

 そもそも、日本高血圧学会が病院での血圧測定値より家庭血圧を重視したのは、医師や看護師の前では緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」や、病院では正常なのに自宅で測ると高くなる「仮面高血圧」があるからだ。しかも、危険な「夜間高血圧」の判断材料になるのは就寝前の血圧や起床直後の血圧なので、これは家庭でなければ測るのは難しい。

「ですから、大切なのは毎日計測してその変化を知り、治療のタイミングにすることなのです」

 では、正しい家庭血圧測定とはどのようなものなのか?

 血圧計には「上腕」「指先」「手首」で測るタイプがあるが、望ましいのは「上腕」タイプ。

「1~2分安静にした後に背筋を伸ばし、上腕で測ってください。腕は一度左右で測って高い方で測るようにしましょう。そうすれば、高血圧を見逃すことは少なくなります。ちなみに、左右差が20mmHg以上あれば、低い方の血管の動脈硬化が進んでいる可能性があります」

 腕は強く伸ばしたりせず、上腕の位置を心臓と同じ高さに置く。測定する場所が心臓より低いと血圧は高めに、高いと低めに出る。

「手の指や手首で測るタイプはコンピューターによって計測部位による誤差を修正します。ただ、メーカーによりその修正の度合いが違ううえ、動脈硬化が進むと正しい値が出しにくくなります」

 起床後の測定は排尿後に行う。トイレを我慢すると血圧が高く出る恐れがある。むろん、服薬・食事前に行う。夜は入浴、食事に関係なく、寝る前に測るだけでいい。

 高血圧の診断基準は、病院では「140/90mmHg」、家庭では「135/85mmHg」。食事や運動をしても基準を超えた状態が続くようなら、医師に相談するといいという。

「脳卒中や心筋梗塞が怖いからといって、高いお金を払って定期的に病院で検査を受ける前に、家庭でできることがあります。それが家庭血圧の測定です。これを地道に行い、その異常を察知することが命を救うのです」

 さあ、今日から実行だ。

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