生活習慣病は「いつ食べるか」を意識して予防する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健康のために「何を食べるか」に気を付けている人は多い。たしかに、体にいい食材を意識して摂取することも大切だが、「いつ食べるか」に気を配れば、より健康的になれるという。

 人間の体には、一定時間ごとに生命リズムを刻む体内時計が備わっていて、日周リズム(サーカディアンリズム)、週周リズム、月周リズム、年周リズム(季節性リズム)、90分リズム(ウルトラディアンリズム)の5つの体内時計があるといわれている。

 県立広島大名誉教授で、東北女子大教授の加藤秀夫氏(時間栄養学)は言う。

「体内リズムは、体温、血圧、睡眠、運動などの生命活動や、心身のコントロールをつかさどっていて、健康・栄養管理や、病気の予防・治療にも応用されるようになってきています。近年、食事が体内リズムの形成に影響することも分かってきました。体内時計のリズムの刻み方に合わせて適切に食事を取ることが、効果的に栄養素を取り入れることにつながり、健康づくりに役立つのです」

 動脈硬化、糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、心筋梗塞や脳梗塞といった突然死を招く病気の原因になる。そんな生活習慣病も、「いつ食べるか」を意識すれば、予防につながるという。

■肥満

 肥満は生活習慣病の大敵だ。人間は食事をすると消化のためにエネルギーが消費され、体熱を発する。これは「食事誘発性体熱産生」と呼ばれ、熱産生が高ければそれだけ有効にカロリーを消費していることになる。

 加藤教授は、食事パターンがエネルギー代謝に与える影響について実験を行った。朝食、昼食、夕食で計1800キロカロリーを摂取。メニューは同じにして量を調整し、①「朝2(400キロカロリー)、昼3(600キロカロリー)、夕4(800キロカロリー)」②「朝3、昼3、夕3」③「朝4、昼3、夕2」の3グループに分けて、熱産生を計測したところ、最も熱産生=エネルギー代謝が高かったのは、②「朝3、昼3、夜3」のグループだった。

「朝食を多く取る方が良さそうな気がしますが、起きたばかりで、まだ消化機能が準備できていない朝に多く食べるのは効率が良くないのです。とはいえ、朝食は重要で、人間は朝食を食べることで日周リズムのずれをリセットしています。また、朝食を抜くと、熱産生量が80~100キロカロリー程度減り、逆に深夜に食べると、40~50キロカロリーの脂肪が蓄積されるといわれています。就寝前は、エネルギーの消費力を高める『オレキシン』の分泌が低下しているため、食べたものを体内でうまく利用できず、余った栄養素が脂肪組織へ貯蔵されるためです」

■血糖値

 糖代謝にも体内リズムがあり、食後血糖値は朝8時ごろから夜8時ごろにかけて正常に維持され、夜遅くなるほど血糖値が高い状態が続く。夜は糖代謝を行うインスリンの働きが悪くなるのだ。

「糖尿病患者に朝食を増やして夕食を減らす生活を続けるよう指導したところ、過去1~2カ月の平均血糖値を示すHbA1cが10%程度だった患者さんが、1年後には正常値の7%近くまで回復しました。時間はかかりますが、きちんと朝食を食べ、夕食を腹八分目まで減らすだけで、血糖値を下げることができるのです」

 肥満予防と同じく、夕食は就寝4時間前までに済ませ、どうしても遅くなるときは2時間前で量を2分の1、1時間前なら4分の1に抑えたい。

■高血圧

「血圧も、体内リズムによってコントロールされています。塩分は人間にとって重要な栄養素ですが、高血圧の患者さんは減塩する必要があります。3食のうち、いつ減塩すると塩分の排泄能力が高いのかを調べたところ、夕食後が最も高くなりました。3食すべてで塩分を制限しても続きません。朝と昼は減塩し、夕食は緩めるのが効率的です」

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