心臓疾患は早期に対処を行えば、元通りの生活を取り戻せる病気です。しかし、病気によっては突然死するリスクが高いものもあります。今回から、病気ごとに心臓突然死を徹底的に防ぐ方法をお伝えしていきます。
突然死とは「発症から24時間以内の死亡」と定義され、心臓疾患による突然死は、日本では年間約5万件が発生しています。突然死する危険がある心臓疾患は主に3つあります。①急性冠症候群による急性心筋虚血②大動脈破裂や解離性大動脈瘤③致死性不整脈――です。
まずは①急性冠症候群についてお話ししましょう。急性冠症候群というのは、急激な心臓の血管の収縮や狭窄によって、突然死を引き起こす可能性がある重症な疾患の総称です。
動脈硬化などによって心臓に栄養や酸素を送っている冠動脈にプラークが形成され、そのプラークが破綻して血流が途絶えることで起こります。心臓への血流が途絶える(虚血)と、心筋が壊死してポンプ機能を失い、脳に血液を送ることができなくなって死に至るのです。臨床的には、「急性心筋梗塞」や「不安定狭心症」がそれに当たります。
急性冠症候群のような冠動脈の疾患は、「危険因子」がはっきりわかっています。高脂血症(高コレステロール)、高血糖、高血圧、肥満、喫煙です。これらのリスクファクターを普段からしっかり管理していれば、突然死も防ぐことができます。
■危険因子を抱えた人が急増中
また、一度発症した後も、何をどれくらいコントロールすれば再発を予防できるかもわかっています。たとえば、LDLコレステロールがそうです。一般的には、LDLを「90㎎/dl以下」にコントロールすれば再発を防げるといわれていますが、当院では「70以下」に管理するとより明らかな再発予防効果があるというデータがあります。
LDLは、「スタチン」などのコレステロール低下剤を服用することでコントロールしますが、70以下に管理するためには、副作用をしっかり見極められる医師を選ぶ必要があります。コレステロール低下剤は、筋肉痛や関節痛、まれに筋萎縮や横紋筋融解症といった重篤な副作用を起こす可能性があります。70以下といったように厳格に管理すると、副作用を訴える患者さんが増える傾向にあるからです。
再発予防も含め、コレステロール低下剤でLDLを厳格にコントロールする場合は、循環器の専門医を選ぶのが最低条件です。さらに、経験年数やキャリアをチェックし、病気や薬に対する知識があるかどうかも確認しましょう。そして何より、自分が納得できるような対応をしてくれているかどうかが重要です。
冠動脈の疾患による突然死を防ぐには、LDLだけでなく血糖をきちんとコントロールすることも大切です。空腹時血糖値「110㎎/dl未満」、HbA1c「6.0%未満」が基準値になります。
血糖が高い状態が続くと、血管に負担がかかって動脈硬化が進みます。また、血液中の糖分が増えるとコレステロール値がそれほど高くない人でもプラークができやすくなるケースもあるのです。
日本では、2000年を境にコレステロール値と血糖値が高い人の割合が急速に増えています。1945年の終戦前後に生まれた人たちは、戦後の食生活や生活習慣の変化によって、体質も高コレステロールと高血糖に傾きました。00年以降、そうした人たちが、高コレステロールや高血糖による病気が発症する年齢のゴールデンゾーンに入っているのです。
そうした傾向を踏まえながら、高コレステロールと高血糖に加え、高血圧まで管理すれば、冠動脈の疾患による突然死は大幅に防ぐことができます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」