発見時4割手遅れ 糖尿病専門医が教える膵がんの見つけ方

血糖の乱れも早期発見の手がかり
血糖の乱れも早期発見の手がかり(C)日刊ゲンダイ

「膵がんは、発見時には43.4%が他臓器に転移しており、ステージ4の末期がん」――。

 先日の国立がん研究センターの発表に衝撃を受けた人も多いだろう。しかし、裏を返せば6割近い膵がんは治療可能な段階で見つかったということ。毎年3万人もの命を奪う膵がんは自覚症状が乏しく、決め手となる腫瘍マーカーがないことで知られる。どうすれば早期発見できるのか? 膵がんと関わりがある糖尿病の専門医で、AGE牧田クリニック(東京・銀座)の牧田善二院長に聞いた。

 膵臓は胃の後ろにある長さ20センチほどの臓器だ。食べ物の消化を助ける膵液と血糖値の調整に必要なホルモンを産出する。

「膵臓にがんができると胃や背中が重苦しいとか、食欲不振や体重減少や黄疸などの症状が出ます。しかし、これらの症状は他の原因でもみられるため、膵がんを自覚するのは難しいといわれています」

 唯一の手がかりになりそうなのが血糖の乱れだ。膵臓にがんができると、インスリンを分泌するβ細胞が壊れることがある。そのため、糖尿病を発症したり、血糖コントロールが悪くなる。

「確かに膵がんになると血糖値が急激に上がるといわれていますが、実際はそれほど多いわけではありません。膵がんの90%以上は膵管にできるため、膵臓の一部でしかないβ細胞は、傷つかない人も多いのです」

■1センチ以下のがんもOK

 牧田院長のクリニックでは年間2000人以上の糖尿病患者が来院し、うち2人程度が膵がんになるという。しかし、血糖コントロールはむしろ良いケースが多いという。

 では、膵がんを早期発見する方法はないのだろうか?

「私は患者さんに50歳を過ぎたら、年に1回、胸部から腹部にかけてのCTとお腹のMRIであるMRCP(MR胆管膵管撮影)を受けるよう勧めています。MRCPは胆汁や膵液の撮影を強調する方法で、膵がんを見つける大きな武器になります」

 昨年、50代の男性はCTスキャンで「膵管拡張の疑いあり」と診断された。MRCP検査を受けたところ、2ミリほどの膵管がんが発見され、無事手術で切除したという。

「以前、当院では6ミリごとに画像にする、胸部から腹部にかけてのCTだけを勧めていました。しかし、毎年CT検査を受けていた60代の会社経営者が膵がんを発見できずに亡くなった。その経験からMRCPを勧めるようになったのです」

 膵臓を調べる検査は健診や人間ドックなどで行われる腹部超音波(エコー)検査が一般的だ。ところが、膵臓は胃の後ろにあるため腸のガスや内臓脂肪が邪魔して1センチ以下の膵臓の病変を見つけるのは難しい。

「他に胃カメラを使って細い管を胆管、膵管に直接挿入して造影剤を注入し、画像を得る、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)という方法もあります。これは大変精密な画像が得られるのですが、患者さんにとっては骨の折れる検査法です。まずは、MRCPが患者さんにとって受けやすい検査と考えています」

 膵臓がんは5年生存率が7.7%(06~08年)と悪性度が高いうえ、場所柄転移が早い。それだけに早期発見早期治療が重要だ。MRCPやERCPは決して安くはない検査だが、原因不明のお腹の不調などがある人は検討してもいいかもしれない。

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