米国では経鼻インフルエンザ生ワクチンの評価が変わった

 日本ではインフルエンザワクチンは注射しか承認されていませんが、米国では鼻の粘膜に噴霧する経鼻ワクチンが2003年から承認されています。インフルエンザウイルスを弱毒化した生ワクチンを使用したもので、欧州でも承認され、日本でも米国から個人輸入して患者さんにすすめているクリニックもあります。

 今年、この経鼻インフルエンザ生ワクチンについて米国内での評価が大きく変わりました。

 米疾病対策センターの予防接種諮問委員会は「経鼻インフルエンザ生ワクチン(フルミスト)」の小児への接種について、「来シーズン(2016~17年)は使用すべきでない」と勧告したのです。

 同諮問委員会は昨年、2~8歳の小児には経鼻接種を優先して接種するという決定を取り下げ、注射に対する優位性を否定したばかり。今回は「禁止」に近い強い表現を使ったことは驚きです。

 理由は、13~16年までの有効性データがはかばかしくなかったからです。同諮問委員会の報告によると「2歳から17歳までの効果(全型のインフルエンザを対象)は、13~14年のシーズンがマイナス1%、14~15年が3%、15~16年が3%」でした。マイナスとはワクチンを接種しなかった人の方が感染しにくかったという意味です。ちなみに、一般的な注射による接種の同期間の効果は60%程度でした。

 日本でも経鼻インフルエンザ生ワクチンの開発が進んでいますが、今後はブレーキがかかるかもしれません。

(松尾内科クリニック・松尾孝俊院長)