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【小児頭痛外来】東京医科大学病院小児科(東京都新宿区)

東京医科大学病院の山中岳講師(右写真はイメージ)
東京医科大学病院の山中岳講師(右写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ
大人と異なる症状 天候変化やストレス、生理不順などが誘因に

 頭痛は子供でも多くみられる症状だが、小児科医師の頭痛専門医(日本頭痛学会認定)は全国でもわずか20人足らず。同科の山中岳講師はその1人だ。毎週月曜日の午後が受診日の「小児頭痛外来」を担当している。現在、受診待ちは4カ月という。

「小児の頭痛で日常生活に支障を来し、問題になるのは片頭痛です。もともと片頭痛は大人の病気という概念があり、痛み方の特徴も大人と小児では違います。そのため正しく診断されなかったり、仮病扱いされるケースが少なくありません」

 通常、大人の片頭痛では、「痛みが4~72時間続く」「ズキズキと脈を打つ痛み(拍動感)」「片側のこめかみが痛い(片側性)」が特徴で、直前に視界がチカチカ光る前兆がある場合も多い。

 ところが小児の片頭痛の場合は、「半数以上は4時間以内に治まる」「拍動感が少ない」「両側性であることが多い」「吐き気や目まいなどを伴う」のが特徴。前兆が表れるのは5人に1人以下と圧倒的に少ない。

 もちろん脳腫瘍など重篤な病気が隠れていないか、最初にCTやMRIで鑑別しておく必要がある。その上で同外来を受診する患者は、「できるだけ薬を飲ませたくない」や「薬を飲ませても効かない」と訴える親が大半だという。

「治療は、患者教育を中心とした非薬物療法が基本になります。片頭痛は、『光』『音』『臭い』などに過敏に反応して悪化するので、そのような外的刺激を少なくする。睡眠リズムも重要で、適正睡眠時間は小学生9時間、中学生8時間、高校生7時間以上を目安に整えます」

 ストレス、天候変化、疲労、月経周期なども誘因になる。頭痛ダイアリーをつけて、自分の誘因を見つけて極力避けるのだ。勉強は減らすのではなく、ストレスを回避することを考える。ゲームは完全にやめさせると、かえってストレスを増やすので、ストレス解消程度に時間を決めてやらせる場合もある。

 しかし、これらの非薬物療法で改善がみられなければ、頭痛が起きたときに痛みを抑える鎮痛薬を使う。

「主に、アセトアミノフェンやイブプロフェンを使い、吐き気があれば制吐剤も併用します。薬は飲むタイミングが悪いと効きません。痛みが我慢できなくなったら飲むのではなく、痛み出したら30分以内に飲むのがポイントです」

 鎮痛薬が無効なら、10歳以上の場合では大人の片頭痛で使う「トリプタン製剤」を処方する場合もある。さらに、吐くような重度な片頭痛が月3~4回あるようなら予防薬を検討する。一般的には三環系抗うつ薬や抗てんかん薬が処方されるが、同外来では副作用の心配がほとんどないビタミンB2から処方するという。

「頭痛への不安を持つことが悪いので、最初から薬に頼るのではなく、小児の片頭痛はどういう病気なのかをよく理解してもらうことが大切です。頭痛と上手な付き合い方ができれば、6~8割前後は改善します」