病院は本日も大騒ぎ

「点滴の速度を間違えた」「酒を持ち込む患者見逃した」

 関東圏の総合病院に勤務して20年になる看護師のマサエです。

 長いこと入院病棟を担当していますが、時々、職務中に“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とするような体験も少なくありません。

 私たちはこれを「ヒヤリハット」(メディカルインシデント=医療ミス)と言っていますが、やはり経験が浅い若い看護師に多いですね。

 毎日、昼夜関係なく勤務時間が終了すると、看護師は「看護日誌」を書き、ナースセンターに保管します。さらにヒヤリハットを起こしたときは、病院によって名称が違うと思いますが「ヒヤリハット報告書」、あるいは「ヒヤリハット連絡票」なるインシデントリポートを上司に提出しなければなりません。

 また、事故を起こせば「事故報告書」の提出が義務付けられています。

 私自身は「ヒヤリハット」の経験が2度あります。まずは10年ほど前、胃の手術をした患者さんの点滴の速度を間違えて、早く滴下してしまったこと。幸い、病室を巡回していた他の看護師がすぐにこのミスに気付き、事故には至りませんでした。

 もうひとつは、私の担当だった肝臓を悪くして入院していた患者さんが、お酒を隠して病室に持ち込み、飲酒していたことです。

 このような「ヒヤリハット」報告書を提出すると、看護師長や主任を中心にナースセンターや会議室で病室担当の看護師の聴取が行われます。なぜ、こんなミスを犯したのか。同じミスを二度と起こさないためにはどうしたらいいかなどを討議するのです。

 当時、私は上司から「どうしてこんなミスを?」程度のお叱りで済みました。でも、経験が浅い若い看護師の場合は、教育のために激しく叱咤されることもあります。

 マジメな看護師は、休日になると書店に行き、「看護師ヒヤリハット」といった類いの本を購入して勉強していますが、ミスの原因が性格にあるタイプは簡単には直りません。中には、インシデントリポートを書く前に、先輩看護師に“罪”を告白し、「怒られないためにはどんな書き方をすればいいのか」を相談している人もいます。

 まあ、そんなことをしても、結局はきつく怒られるんですけどね。