有名病院 この診療科のイチ押し治療

【心臓病】石川島記念病院・心臓病センター(東京都中央区)

石川島記念病院・心臓病センターの南雲正士院長
石川島記念病院・心臓病センターの南雲正士院長(C)日刊ゲンダイ
バイパス手術をオフポンプで行う地域密着型病院

 東京・佃の高級タワーマンション街のど真ん中に、この病院はある。前身は石川島播磨重工業(現IHI)の従業員とその家族を診る健康保険組合病院であったが、2012年に医療法人社団「健育会」に経営が移管され一般病院として開放。その2年後に「心臓病センター」が新設された。

 同センター長で心臓外科治療のエキスパートである南雲正士院長が言う。

「もともと企業の病院でしたから、それまでは内科と整形外科を中心とした入院診療をしてきた歴史がありました。それで、病院を新しく立ち上げるに当たり、もう少し特化した医療を提供しようと開設したのが当センターです。移植などの高度先進医療を必要としない心臓病に対する2次医療を完結できるのが当センターの特色です」

 同院は、古くから実績のある整形外科と同センターが診療科の2枚看板になるが、全病床47床のうち半数は常に心臓病の患者で占められるという。

■9月に2次救急指定病院へ

 ICU(集中治療室)2床とHCU(高度治療室)4床も心臓病専門として機能している。今年9月には東京都の2次救急指定病院となり、救急受け入れも開始している。

 中央区内にある病院は、国立がん研究センター、聖路加国際病院、そして同院の3施設しかなく、地域密着型の心臓病センターの役割に対する周辺住民の期待は高いという。

「超高層マンションが立ち並ぶ一方で、この辺のエリアは古くから住んでいる高齢者が意外と多いのです。疾患で多いのは、狭心症、心筋梗塞、不整脈、次いで弁膜症などの心臓病になります」

 特に心筋梗塞の場合、治療は一刻を争う。まず緊急性が高ければ、腕や脚の動脈から細い管を挿入して閉塞した血管を広げるカテーテル治療が第1選択肢になる。

 しかし、患部が心臓の血管の急所にあったり、病変のある冠動脈が何本もあるとカテーテル治療では予後が悪い。そのような場合には冠動脈の迂回路をつくるバイパス手術の対象になる。同センターは、バイパス手術でも人工心肺を使わない(心臓を止めない)オフポンプ手術を得意とする。

「人工心肺を使うこと自体にもリスクがあり、オフポンプ手術の方が術後の脳梗塞などの合併症が少なく、回復も早い。手術の成績やクオリティーは同等以上です」

 ただし、すべてのバイパス手術がオフポンプ手術でできるというわけでもない。弁膜症や大動脈瘤などの手術を同時に行う場合には、人工心肺が必要になるという。

「どの治療法、術式にしても、治療後の成績、患者さんの体の負担、早期回復を総合的に判断して、個々の患者さんに合った最善の医療を提供するのがモットーです」

 常勤医師は少数精鋭だが、慶応大、東大、日本医大、横浜市大、昭和大などの医局出身者で、全員が15年以上のキャリアをもつ専門医で構成されている。また出身医局だけでなく、杏林大、順天堂大などとも医師連携している。検査機器も大学病院と劣らない最新機器をそろえているという。

データ
 元IHI東京病院。2012年に医療法人社団健育会グループに入り、名称変更。
◆スタッフ数=循環器内科医3人、心臓血管外科医2人(他に非常勤医師12人)
◆年間初診患者数(2015年)=755人
◆年間手術総数(同)=カテーテル手術54件、心臓手術21件