病院は本日も大騒ぎ

点滴量を間違え「おしっこが止まらない」と患者さんが困惑

 関東圏の総合病院に勤務して20年になる看護師のマサエです。

 先日、「ヒヤリハット報告書」についてお話ししました。早くミスに気が付き、医療事故を未然に防ぐことを目的にしたものですが、このヒヤリハットを超えたケースが「インシデント報告書」です。

 私たち看護師は、常に細心の注意を払いながら業務を遂行しています。それでも人間ですから、思わぬ重大ミスも時に起こってしまいます。

 以前、若い看護師のインシデント報告書を目にしたときに「尿検査」のミスを見つけました。

 入院患者さんに尿検査が必要になった場合、まず紙コップを渡します。

 しかし、患者さんによってはすぐに排尿ができないことがあります。そんなときは、排尿を促す「ラシックス」という薬を使います。

 これには飲み薬もありますが、点滴でも行います。ラシックスは医薬品保管場所に置かれ、当日の管理責任者が毎日、患者さんのカルテと見合わせながら使用数を点検します。ところが、ある日どうしても1本足りないことが分かりました。

“どうしたのだろう”と不思議に思い、当日、ラシックスを使用した看護師に尋ねると、使用量を間違っていたことがわかりました。

 1アンプルでいいのに、なぜか2アンプルを使用していたのです。

 すぐ担当医に連絡して、事後処理をしたそうですが、患者さんは「おしっこが止まらない」とこぼしていたそうです。このような事故は「インシデント」と呼ばれ、詳しい報告書を書いて上司に提出しなければなりません。

 インシデントで他に多いのは、「点滴設定」の間違いですね。24時間キープの点滴はいいのですが、患者さんによっては時間が決められています。その時間設定を間違えて、3時間のところを1時間にしてしまうといったミスがあるのです。

 一般の人はピンとこないかもしれませんが、この過量投与は大変危険な行為で、心不全の患者さんであればアッという間に肺水腫になりますし、呼吸器疾患の患者さんの場合は肺の間質に水が漏洩し、呼吸不全になることもあります。

 また血液検査で、誤って未検査の血液を捨ててしまったミスもありました。看護師が患者さんに平謝りして再検査をしましたが、病院の裏では考えられないミスが起こっているものなのです。