役に立つオモシロ医学論文

ネット上のつながり好影響 フェイスブック活用者は長生き

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 インターネットが普及して、他人との関わり方は大きく変化しました。ツイッターやフェイスブック等の「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」と呼ばれるコミュニティー型のネットワークサービスを通じて、さまざまな人間関係を構築できる時代になったからです。

 地域社会において、「社会的つながりを有する人は長生きする」ことが報告されているようですが、こうしたインターネット上でのつながりも現実世界の人間関係と同様に、寿命に対して何らかの好影響を与える可能性があります。

「フェイスブック上での行動と寿命の関連」を検討した論文が、米国科学アカデミー紀要オンライン版(2016年11月15日付)に掲載されました。

 この報告はフェイスブックを利用した1200万人における6カ月間のネット上での行動と死亡の関連を2年間追跡調査したものです。

 その結果、「フェイスブックを使用していた人たち」は、「使用していない人たち」に比べて年間で12%、死亡のリスクが低いことが示されました。原因別の検討では、「感染症」「糖尿病」「精神疾患」「心臓病」「脳卒中」で死亡する人たちが統計学的にも有意に低いという結果でした。また、フェイスブック上で写真を投稿している人などでも死亡のリスクが低かったと報告されています。

 この研究で示されたのは、フェイスブックの利用状況と死亡の関連のみであり、因果関係を決定づけるものではありません。フェイスブックを利用している人は経済的に裕福であるなど、もともと死亡リスクがそれほど高くない集団かもしれません。

 とはいえ、ネット上での人間関係が何らかの影響を与える可能性は否定できません。今後の研究に注目です。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。