ドキュメント「国民病」

【うつ病】EDで彼女の献身的な行為もプロの技も効かない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 うつ病にかかって「食欲不振」や「不眠」が続き、会社欠勤も2年目に入った越川正則さん(仮名、62歳=東京・板橋区在住)は、もう一つの身体異変に襲われた。「ED」(勃起不全症候群)に陥ったのだ。

 3DKの自宅マンションに一日中引きこもり、パジャマ姿のまま所在なく暮らす。肩が凝り、時々頭痛もあった。

 学生時代に登山を始め、社会人になってからも仲間とチームを組み、夏と冬の登山を楽しんできた。体力には人一倍の自信があった越川さんだったが、うつ病が発症した後、性欲も徐々に衰えていった。

「セックスをしたい」という気持ちが起こらない。テレビに登場するきれいな女性を見ると、昔だったら「いい女だ」とつぶやいていた。そうした感情さえも消えてしまった。やがて、毎朝方に勃起しなくなっていることにも気付いた。

 越川さんは20代で2年間の結婚生活を経験。離婚後は、何人かの女性と交際してきた。うつ病を発症しても治療を拒否していた越川さんを強引に「東京医科歯科大学付属病院」(御茶ノ水)に連れていったのは、当時、付き合いがあった女性である。

 40代で人材派遣業の会社を起こしたとき、アルバイトで入ってきた若い女性だった。机を並べている間に恋心を抱き、男女の仲になったが、越川さんより20歳も若かった。結婚の約束までしていたが、年の差がネックになって彼女の両親から猛反対されていた。

 月に1、2回、彼女は越川さんのマンションを訪ねてきて泊まっていく。酒を飲みながら笑いの絶えない会話を楽しんでいたが、うつ病発症から2年後、セックスがまったくダメになった。彼女は時間をかけて、献身的に勃起を促してくれたが、ピクリともしない。勃起不全薬も何度か試してみた。しかし、ほとんど効果がなかった。

 まだ50歳を過ぎたばかりで、勃起不全になるような老齢ではない。越川さんは、「うつ病を自覚する52歳の直前まで、毎日でもセックスは可能だったんです。これが、どんなに優しくされても勃起しない。インポですね。このショックは大きかった。大げさですが、生ける屍になったような気分でした」

 勃起不全は相手が悪いからではと思い、事前に勃起不全薬を飲んでから池袋のソープランドへ行き、その道のプロに任せてみた。しかし、結果は同じだった。

 自宅近所のクリニックで「勃起不全薬」を求めたとき、医師から「うつ病にかかると脳のメカニズムも狂って、勃起不全もよく起こります。うつ病を治す以外に改善はないですよ。でも、焦ってはダメです」と言われたという。

 仕事もしない、性能力もない越川さんの前途を悲観した彼女は、次第に距離を置くようになった。