気温が下がると、血管が収縮し血圧が高めになります。それだけでなく心臓病による死亡のリスクも増加するという研究報告があり、以前、このコラムでも紹介しました。
12月も半ばを過ぎると、朝晩は特に冷え込みます。朝は部屋が寒くて、布団からなかなか外に出られない、なんていう人も多いでしょう。そんな時、エアコンのタイマー機能を使って、起床時間の少し前に暖房が入るよう設定しておく方も多いと思います。
さて、このようにタイマー機能であらかじめ室内を暖めておけば、血圧の上昇を防ぐことができるのでしょうか。国際高血圧学会誌2015年11月号に、日本人高齢者を対象とした研究が報告されています。
この研究では359人の高齢者(平均71・6歳)が対象となり、部屋の温度を起床前からあらかじめ暖めておく介入群(186人)と、介入を行わない比較対照群(173人)にランダムに振り分けました。介入群では、起床の1時間前から、室内温度を24度にするようにエアコンをセットし、起床から2時間まで可能な限りその部屋にいるよう指示を受けています。
その結果、年齢、性別、身体活動状況、服用している高血圧薬などで、統計学的に補正をしても、介入群で収縮期(上の)血圧が4.43mmHg、拡張期(下の)血圧が2.33mmHgで、統計学的にも有意に低下していました。
この研究では血圧の下がり具合しか評価していないので、実際に心臓病や、高血圧で発症しやすくなる脳卒中のような病気リスクがどれくらい低下するかはよくわかりません。とはいえ、起床前に暖房をつけておくことは、血圧上昇をわずかながら抑える効果があると言えるかもしれません。
役に立つオモシロ医学論文