当事者たちが明かす「医療のウラ側」

「後を継ぎたい」と言ってくれたのはうれしいが…

首都圏60代開業医

 私の息子は都内の私立医大の学生です。正月に話をしたとき、“将来は私の後を継いで開業医になりたい”などと申しておりました。

 親として大変うれしい思いをしたものの、正直“難しいだろうなあ”と感じました。

 というのも、多死社会で患者さんの数が減るなかで、処方薬の大衆薬化や人工知能の医療への応用などにより医院の経営が苦しくなると予測されるからです。

 さらに問題なのは新たに導入される専門医制度への不安です。

 最近の議論を見ていると、新たな専門医資格は大学病院で働かなければ取れなくしようとしているとしか思えません。これは大学病院の医局を復活させ、かつてのように若手医師の上前をはねるために、専門医資格を盾にしているのだと思うのです。

 せっかく医学部を卒業しても30歳すぎまで安い給与で研修施設である大学病院で働かないと専門医資格を得られないというのはいかがなものでしょうか?

 私は既に60代で、現在、医大生の息子が順調に医師国家資格、専門医資格を得て、私の後を継ぐ頃には私は70代となっていて、私の抱えている患者さんのことを教えていくには時間が足りないかもしれないのです。

 結局は医師の息子といえども開業医になるには初めて開院するのと変わらない努力が必要とされることになるでしょう。

 そんなことなら、海外の医療機関で勤務医として働いた方がマシだとも思うのです。

 私の医師仲間の話ではシンガポールやインドネシア、上海などアジアの国際都市で働いた方が実入りもいいし、子供の教育にも良いとのこと。さまざまな制約に縛られて、大学病院の階級社会に染まるよりも、精神的にも解放されるようです。

 むろん、良いことばかりではないでしょうが、息子にはそんな道もあることをいずれ話して聞かせようと思っています。