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噛むと脳活性化なのに…若者「ガム離れ」なぜ起きた?

 ガムが売れなくなった。全日本菓子協会の統計によると、チューインガムの小売額は2004年の1881億円をピークに2015年は1113億円まで落ち込み、4割以上の減少だ。

 原因はさまざまだ。かつては口寂しくなったり手持ち無沙汰になると、ガムを噛んだものだが、今は暇つぶしに何をするかといえばスマホ。また気分転換や運転中の眠気覚ましに必需品だったが、若者の「クルマ離れ」も「ガム離れ」につながった。コンビニで買うのはガムではなく、カウンターコーヒーという若者も多い。

「タブレット菓子の普及など、消費者の選択肢の幅が広がったことも理由のひとつではないでしょうか。幼少期にガムに触れるきっかけが少ないと、大人になってからもガムを噛む習慣が少ないともいわれ、あえてガムを噛むことが以前に比べて少なくなったのでは」(ロッテ広報室)

 ガムを噛むことによる健康効果は多い。神経内科医で自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介教授がこう言う。

「記憶力、思考力、認知力、集中力、精神安定力がアップし、脳の活性化につながります。ガムほど歯の奥を持続的、かつリズミカルに刺激できるものはありません。ガムを噛めば午後の眠たい会議も乗り切れますし、集中力が増していい発想が生まれるかもしれません。個人差はありますが、ガムを噛んだ後に50メートル走をすると成績が上がったというデータもある。認知能力がアップし、覚醒するのです」

 ガムを噛む若者が減ったからキレやすくなったのかと思いきや、「因果関係はない。それで思考能力が落ちたりしたわけではありません」と、柿木教授。

■過食防止にも

 日本チューインガム協会によると、ガム1枚を噛む回数は550回。そばの15回、チャーハンの47回をはるかに上回る(各10グラム当たり)。

「よく噛んでゆっくり食べる人は、早く食べる人に比べ、2型糖尿病やメタボリックシンドロームになりにくい」と、歯科医で深井保健科学研究所の深井穫博所長がこう続ける。

「咀嚼は唾液の分泌を増加させ、疾患予防、消化促進などのほか、生活習慣病の予防、特に肥満予防につながります。日本肥満学会の『肥満症治療ガイドライン』では、30回噛むことが推奨されています。よく噛むとヒスタミンの量が増え、満腹中枢や交感神経が刺激され、食欲が抑えられ、満腹感を得やすくなります。食べ始めてから脳の満腹中枢が働くまで約20分かかるため、過食防止になるのです」

 場所を選ばず短時間でこれほど費用対効果の高いアイテムはないのだ。

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