役に立つオモシロ医学論文

体重への偏見は肥満者の健康を悪化させる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 肥満の人が、その体形を理由に非難されると、体重に対する偏見を自分へと向けてしまう(肥満を恥じて自分を責める)ことがあるそうです。これを「体重偏見の内在化」と呼びます。

 本来、体形を理由に非難することは差別的な行為であり、許されることではありませんが、「米国肥満学会誌」(2017年2月号)に体重偏見の内在化とメタボリックシンドロームの関連について検討した論文が掲載されました。

 メタボリックシンドロームとは肥満体形に加えて、「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」のいずれか2つを有している状態を指します。

 この研究では、体重偏見の内在化に関するアンケート調査に回答した159人(平均44歳)が解析対象となりました。体重偏見の内在化は1~7点で評価され、点数が大きいほど内在化の度合いが高い、つまり肥満について強く恥じていることを意味します。なお、被験者の平均BMI[体重/(身長×身長)]は平均で41.1でした(日本人の40代における平均BMIは24)。

 研究の結果、体重偏見の内在化の度合いが高い人たちでは、メタボリックシンドロームの診断基準を満たす傾向にありました。また、補足の解析では内在化の度合いが低い人に比べて、高い人でメタボリックシンドロームが約3倍多いという結果でした。

 この論文だけで、体重偏見の内在化がメタボリックシンドロームを引き起こすとは結論できませんが、体重に対する偏見は健康問題の改善につながらないばかりか、逆に悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。

 肥満体形に対する非難は差別的問題であるとともに、「肥満者の健康を悪化させる危険がある」ということは知っておくべきでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。